創作者にとっての「地雷企業」は、普通の地雷とは違う
こんにちは。腰ボロSEです。
「地雷求人の見抜き方」という記事は、転職サイトにいくらでもあります。「アットホームな職場です」は要注意、「若手が活躍中」は定着率が低い証拠、「やりがいのある仕事」は低賃金の言い換え——こういった定番の見抜き方は、調べればすぐに出てきます。
今回はその先の話をします。一般的には「良い会社」でも、創作者にとっては地雷になり得る企業の話です。
「ホワイト企業」が地雷だった話
以前の記事で、職場を「執筆インフラ」として選ぶ話を書きました。残業が少ない、リモートワークがある、副業が許可されている。これらの条件を満たしていれば安心だと、当時は思っていました。
ある会社は、条件面では文句なしでした。月の残業は10時間以下。有給消化率も高い。副業も届出制で認められている。求人票だけ見れば完璧です。口コミサイトの評価も悪くなかった。
入社してみたら、予想外の問題がありました。「飲み会文化」です。
残業は少ないのに、週2回のペースで部署の飲み会がある。参加は任意ですが、「任意」の空気感は皆さんも想像がつくでしょう。断り続けると「あの人は付き合いが悪い」という評価が定着し、翌月のプロジェクトアサインに影響が出る。18時に仕事が終わっても、22時まで居酒屋にいたら執筆時間はゼロです。しかも翌朝はアルコールで頭がぼんやりしている。
口コミサイトには「社員同士の仲が良い」と書かれていました。嘘ではありません。でもその「仲の良さ」が、個人の時間を侵食する形で成立していたのです。
創作者にとっての5つの地雷ポイント
一般的な転職チェックリストに載っていない、創作者固有の地雷ポイントを整理します。
ひとつ目は「予測不可能な突発業務が多い会社」。残業時間の平均が少なくても、いつ発生するかわからない突発対応がある職場は危険です。月の残業が20時間でも、それが分散しているのか集中しているのかで、執筆への影響はまったく違います。「毎日1時間の残業」と「月に3日だけ深夜残業」は、同じ20時間でも後者のほうが連載を壊します。
ふたつ目は「社内コミュニケーションが過剰な会社」。Slackやチャットが常に動いていて、業務時間外にも通知が飛んでくる。「すぐに返信しなくていい」と言われても、通知を見た瞬間に脳のリソースが仕事に持っていかれます。帰宅してエディタを開いたのに、頭の中は未読メッセージの内容でいっぱい——この状態で異世界の風景は浮かんできません。
みっつ目は「出張が多い会社」。出張先ではホテルで書けると思うかもしれません。私も最初はそう考えていました。でも実際には、出張中は移動疲れと慣れない環境で、執筆のルーティンが完全に崩れます。月に2回の出張がある仕事を1年続けたとき、その年の執筆量は前年の半分以下でした。
よっつ目は「副業可でも"空気的に"言えない会社」。制度として副業は認められていても、実際に副業をしている社員がほぼいない会社があります。前例がないと、申請するだけで目立つ。人事部に「小説の印税が入るので届出したいのですが」と言ったときの、電話口の微妙な間を今でも覚えています。
いつつ目は「知的好奇心を刺激しすぎる会社」。これは意外に感じるかもしれません。技術力が高く、扱うプロダクトが面白い会社に入ると、仕事そのものに没頭してしまうことがあります。これは一般的には良いことですが、創作者にとっては「仕事が楽しすぎて書かなくなる」という落とし穴になり得ます。若い頃の私がまさにこれでした。
面接で「聞けないこと」をどう探るか
上に挙げた地雷ポイントのうち、求人票でわかるのはせいぜい出張頻度くらいです。飲み会文化やチャットの密度は、面接で直接聞くのが難しい。「御社は飲み会が多いですか」とは聞けません。
代わりに使えるのは、間接的な質問です。
「一日のスケジュールを教えてください」と聞けば、定時後の活動が見えることがあります。「チーム内のコミュニケーションはどのように取っていますか」と聞けば、Slackの密度がわかる。「業務時間外に連絡が来ることはありますか」は、フレーズを選べば角が立たずに確認できます。
もうひとつ有効なのは、面接ではなく「カジュアル面談」を活用することです。最近は選考前にカジュアル面談を設定してくれる会社が増えています。正式な面接よりも率直な話が聞けるので、「プライベートの時間は確保しやすいですか」という踏み込んだ質問もしやすい。
一番確実なのは、その会社で実際に働いている人に直接聞くことです。転職エージェント経由で紹介してもらうか、SNSで繋がるか。手間はかかりますが、入社後に「こんなはずでは」となるコストに比べれば、事前調査の手間は安いものです。
「完璧な職場」は存在しない
ここまで書いてきて、「そんな条件を全部満たす会社なんてあるのか」と思った方もいるでしょう。答えは「ない」に近いです。
どの会社にも何かしらの問題はあります。大事なのは、「自分にとって致命的な地雷」と「我慢できる程度の不便」を区別することです。
私にとって致命的だったのは「予測不可能性」でした。突発対応で週末の予定が消飛ぶのだけは耐えられなかった。逆に、多少の飲み会や出張は許容範囲でした。この優先順位は人によって違います。
自分にとっての「一番踏んではいけない地雷」が何かを知ること。それが、創作者としての転職活動の出発点になります。一般的な「ブラック企業チェックリスト」では足りません。あなただけの地雷マップを作ってください。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
さて、今日も物語を書きましょう。腰は壊しても、筆は折らない。
腰ボロSE
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