小説で使える「哀しみ」の感情表現30選|切ないから慟哭まで例文付き辞典

2021年11月8日

「悲しい」とひとことで書くのは簡単ですが、悲しみにはグラデーションがあります。ほのかな寂しさと、慟哭するほどの絶望は同じ「悲しみ」でもまったく別の感情です。

小説に深みを与えるのは、この悲しみのグラデーションを細かく描き分ける語彙力です。秋の木々が少しずつ紅葉するように、繊細に感情を塗り重ねられたら、読者の心に長く残る作品になります。

この記事では、小説で使える「哀しみ」の感情を表す言葉30選を強度別に紹介します。

強度レベル1:かすかな寂しさ・物悲しさ

日常のふとした瞬間に訪れる、輪郭のはっきりしない哀しみ。地の文で雰囲気を作るのに最適です。

1. どこか寂しい——理由をはっきり示せない漠然とした寂しさ
> 彼のことは別段好きじゃないけれど、いなくなるとどこか寂しい。

2. ほろ苦い——甘さの中にかすかな苦みがある感情
> 初恋はほろ苦い思い出として、いまでも胸の奥にある。

3. わびしげ——みすぼらしく心細い様子
> 早くに妻に先立たれた彼は、いつもわびしげに一人で買い物をしている。

4. センチメンタル——傷つきやすく感傷的なさま
> 秋になると、なぜかセンチメンタルな気分になる。

5. マイナー——哀しい雰囲気を帯びた調子
> 私はどちらかというとマイナーな曲調に惹かれる。

使い分けのコツ: この5語は「泣くほどではない」寂しさを表します。「どこか寂しい」は自覚のない寂しさ、「ほろ苦い」は時間が経った寂しさ、「わびしげ」は外から見た印象。場面の空気を作るのに使いやすい語群です。

強度レベル2:胸を締めつける悲しみ

感情が明確に動き始める段階。キャラクターの転換点で使いやすい表現です。

6. 切ない——悲しさで胸が締めつけられるような気分
> 彼に突然ふられたときのあの切ない気持ちが、いまも忘れられない。

7. 泣きそう——今にも涙が出そうなほど哀しいこと
> 「財布落としちゃった……」「ほんとに?」「もう泣きそう……」

8. 感傷的——哀しい感情に揺さぶられ涙もろくなること
> 「今日のあなたはずいぶんと感傷的ね」

9. ウェット——情にもろいさま
> 私はウェットなたちなので、ドライな人間が苦手だ。

10. 哀愁が漂う——寂しさや物悲しい雰囲気が感じられること
> 秋の夕暮れ、公園のベンチに座る老人には哀愁が漂っていた。

強度レベル3:深い悲しみ・喪失

物語のクライマックスや大きな喪失シーンで力を発揮する表現です。

11. 痛ましい——見るに忍びないほどかわいそうなさま
> 目の前で痛ましい事故を目撃した。

12. 傷心——悲しく心を痛めること
> たとえ傷心を抱えていても、彼は非常に冷静だった。

13. 言葉にできない——衝撃で言葉が出ないさま
> 映画のラストが衝撃すぎて、しばらく言葉にできなかった。

14. やるせない——思いの晴らしようがなく切ないさま
> 何もしてあげられなかったことが、やるせなかった。

15. むせび泣く——声を詰まらせて泣くこと
> 彼は元カノに別れを告げられたショックでむせび泣いていた。

強度レベル4:圧倒的な悲嘆・絶望

読者の心を揺さぶる決定的なシーンに使う、重い表現です。

16. 慟哭(どうこく)——悲しみのあまり声をあげて泣くこと
> 棺の前で彼女は慟哭した。

17. 嗚咽(おえつ)——声を押し殺して泣くこと
> 暗い部屋で一人、嗚咽をこらえていた。

18. 打ちひしがれる——大きな衝撃を受けて気力を失うこと
> 不合格の知らせに打ちひしがれ、三日間部屋から出られなかった。

19. 断腸の思い——はらわたがちぎれるほどの深い悲しみ
> 断腸の思いで、彼は愛犬を手放す決断をした。

20. 悲嘆に暮れる——深い悲しみに沈むこと
> 母を亡くしてから半年、彼はずっと悲嘆に暮れていた。

文学的・奥行きのある表現

21. 哀切(あいせつ)——心に深くしみるような悲しさ
> 別れの手紙には哀切な調べがあった。

22. 薄幸(はっこう)——幸が薄いこと、不運なさま
> 薄幸の美女という言葉がぴったりの人だった。

23. 無常——すべてが移り変わりはかないこと
> 焼け落ちた家を見て、彼は無常を感じた。

24. 諸行無常——万物は常に変化して止まないこと
> 桜が散るのを見上げながら、諸行無常だなと呟いた。

25. 憂い(うれい)——心配や悲しみ
> その目には深い憂いが宿っていた。

身体に出る悲しみの表現

26. 目頭が熱くなる——泣きそうになること
> 卒業式で恩師の言葉に、目頭が熱くなった。

27. 胸が潰れる——悲しみや苦しさで胸が押しつぶされるような感覚
> 子どもの泣き顔を見て、胸が潰れる思いだった。

28. 喉が詰まる——悲しみなどで言葉が出なくなること
> 伝えたいことがあったのに、喉が詰まって何も言えなかった。

29. 涙腺が崩壊する——涙が止まらなくなること(口語的表現)
> あのシーンで完全に涙腺が崩壊した。

30. 声が震える——感情の高ぶりで声がうわずること
> 「ありがとう」と言おうとして、声が震えた。

使い方のポイント——悲しみの「段階」を意識する

30語をレベル別に並べたのには理由があります。物語のなかで悲しみを描くときは、いきなり最大レベルの言葉を使わないことが鉄則です。

最初から「慟哭」では、もうそれ以上のインパクトを出せません。「どこか寂しい」→「切ない」→「やるせない」→「慟哭」と段階を踏むことで、悲しみのクレッシェンドが生まれます。

❌ 彼は悲しかった。とても悲しかった。

⭕ ほろ苦い記憶だと思っていた。けれど、喉が詰まって言葉が出ないのは「ほろ苦い」なんて言葉では足りないからだった。


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