ねじれ文とは何か?――読みやすい文章を書くために避けたい「構造のゆがみ」
文章を書いていると、「文法的には間違っていないはずなのに、なぜか読みにくい」「何を言いたいのか伝わりづらい」と感じることがありますよね。その原因の一つがねじれ文です。
この記事では「ねじれ文」の正体と直し方を、豊富な例文とともに解説します。読み終わるころには、ご自身の原稿でねじれ文を見つけて修正する力がきっと身についているはずです。
ねじれ文の正体——主語と述語の不一致
ねじれ文とは、一言でいえば 主語と述語がかみ合っていない文 のことです。日本語は語順の自由度が高いため、文の途中に修飾語や挿入句が入ると、書いているうちに主語と述語の対応がずれてしまうことがあります。
たとえば「私の夢は宇宙に行きたい」という文を見てみてください。主語は「夢は」、述語は「行きたい」です。主語だけ取り出すと「夢は行きたい」になりますが、夢が何かを「したい」と思うのは不自然ですよね。正しくは「私の夢は宇宙に行くことです」とするか、「私は宇宙に行きたい」と主語そのものを変える必要があります。
大阪大学のマルチリンガルプラザでも、この「主述のねじれ」は日本語学習者だけでなくネイティブにも頻繁に見られる現象だと指摘されています。つまり、日本語を母語とする私たちでさえ、油断するとねじれ文を書いてしまうということです。
ねじれ文が起きる3つの原因
では、なぜねじれ文は生まれるのでしょうか。私が自分の原稿を振り返ったり、他の方の文章を読んだりするなかで気づいた、主な原因を3つご紹介します。
原因1:一文が長すぎる
最も多い原因がこれです。一文に情報を詰め込みすぎると、書いている途中で主語を見失います。たとえば次のような文です。
「この問題の原因は、政府の対応が遅れたうえに現場の声を十分に聞かなかったからです。」
主語は「原因は」、述語は「からです」。取り出すと「原因は〜からです」となり、ねじれています。正しくは「この問題の原因は、政府の対応の遅れと現場の声の軽視にあります」のように、述語を「〜にあります」に変えるか、文を分割する必要があります。
原因2:修飾語の挿入で主語を忘れる
修飾語や挿入句が長くなると、自分が何について書いていたかを忘れがちです。これは『エヴァンゲリオン』の碇シンジが「逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ」と自分に言い聞かせるうちに、もともと何から逃げようとしていたか見失ってしまうのに似ています。文章でも同じで、修飾語のなかに入り込むと、戻ってきたときに述語の着地点を間違えてしまうのです。
実際の例を見てみましょう。「彼女が昨日の会議で提出した、部長も絶賛していた新企画のプレゼン資料は、非常に優れていたので採用された」——この文では「彼女が」で始まったはずなのに、述語「採用された」の主語がいつの間にか「資料は」にすり替わっています。正しくは「彼女が〜提出したプレゼン資料は非常に優れており、採用された」と、修飾語を整理して主述の対応を明瞭にする必要があります。
原因3:能動態と受動態の混在
「私が企画書を作成し、上司に提出された」——この文では、前半が能動態(私が作成し)、後半が受動態(提出された)に切り替わっています。主語が「私」なら「提出しました」、主語を「企画書」に変えるなら「企画書が作成され、上司に提出されました」と統一する必要があります。
ねじれ文の見つけ方——3ステップ
ねじれ文は、残念ながら書いている最中にはなかなか気づけません。しかし、推敲の段階でチェックする方法があります。
まず ステップ1 として、一文のなかから主語と述語だけを抜き出してみてください。「〜は」「〜が」で始まる部分が主語、文末の「〜です」「〜します」が述語です。この2つだけをつなげたとき、意味が通じるかどうかを確認します。
次に ステップ2 として、一文に「は」「が」が2つ以上ある場合を疑います。主語が複数あるということは、それぞれに対応する述語が必要だということです。足りなければ文を分割しましょう。
最後に ステップ3 として、声に出して読んでみてください。黙読ではスルーしてしまう違和感も、音読すると「あれ?」と引っかかることがあります。これは読点の打ち方を確認するときにも有効な方法ですし、太宰治も自作を読み上げて推敲していたと言われています。
ねじれ文を直す4つのテクニック
見つけたねじれ文を修正するテクニックも、具体的に押さえておきましょう。
テクニック1:一文を短く分割する
最も確実な方法です。迷ったら「。」(句点)を打って文を切りましょう。一文の目安は40〜60文字。これを超えたら分割を検討するタイミングです。
例を挙げます。
❌「彼がその古い屋敷に忍び込んだ理由は、幼いころに祖母から聞かされた伝説の財宝が地下室にあると信じていたからだ」
主述を抜き出すと「理由は〜からだ」——ねじれています。二文に分割してみましょう。
⭕「彼は幼いころ、祖母から伝説の財宝が地下室にあると聞かされていた。それを信じて、古い屋敷に忍び込んだのだ」
文を切るだけで、ねじれは自然と消えます。
テクニック2:主語と述語を近づける
主語のすぐ近くに述語を配置すれば、ねじれが起きにくくなります。修飾語は主語と述語のあいだに挟まず、文頭か述語の直前に移動させるのがコツです。
❌「魔王は、勇者がどれほどの力を持っていようと、仲間を何人連れてこようと、この城を落とすことなどできはしないと、玉座に座ったまま笑った」
主語「魔王は」と述語「笑った」のあいだに長い挿入句が割り込み、結びつきが弱くなっています。修飾語を先に出して整理しましょう。
⭕「勇者がどれほどの力を持っていようと、仲間を何人連れてこようと関係ない。魔王は玉座に座ったまま笑った。この城を落とすことなどできはしないと」
主語と述語を近づけるだけで、文のリズムまで良くなります。
テクニック3:述語からさかのぼってチェックする
文末の述語を起点にして「誰が?」「何が?」と問いかけ、対応する主語を探します。見つからない場合や、見つかった主語が文の冒頭と違っていたら、ねじれている証拠です。
テクニック4:能動態に統一する
能動態と受動態が混在しているときは、どちらかに統一しましょう。とくに小説では能動態のほうがテンポが出ます。「本が読まれた」より「彼は本を読んだ」のほうが動きが見えますよね。
もう一つ例を出します。
❌「探偵が証拠を集め、容疑者のアリバイが崩された」
前半「探偵が集め」は能動態、後半「アリバイが崩された」は受動態。態が切り替わっているせいで、動作の主体がぶれています。
⭕「探偵が証拠を集め、容疑者のアリバイを崩した」
能動態に揃えるだけで、探偵が主人公として立ち上がり、文章に力強さが宿ります。
あなたの物語でねじれ文を撃退するなら
ここまでの知識を、実際の創作に活かしてみましょう。
たとえばファンタジー小説で「この剣の特徴は、持ち主の魔力に反応して光りだす」という文を書いたとします。主語は「特徴は」、述語は「光りだす」。取り出すと「特徴は光りだす」——ねじれていますね。「この剣は持ち主の魔力に反応して光りだす」と直すか、「この剣の特徴は、持ち主の魔力に反応して光ることだ」と名詞で受ければ解決します。
あるいはライトノベルでよくある「主人公の目的は魔王を倒したい」というパターン。「目的は〜したい」はねじれの典型です。「目的は魔王を倒すことです」に直す。たったこれだけで文の安定感が劇的に変わります。
創作でよく出くわすねじれパターンをもう少し見てみましょう。
❌「この物語のテーマは、人はどこまで他者を信じられるかを描いている」
→ 「テーマは〜描いている」がねじれ。
⭕「この物語のテーマは、人はどこまで他者を信じられるか、という問いだ」
❌「彼女の能力は炎を自在に操れる」
→ 「能力は〜操れる」がねじれ。
⭕「彼女の能力は炎を自在に操ることだ」
⭕「彼女は炎を自在に操れる」(主語ごと変える方法もあり)
❌「勇者が魔王城に乗り込んだ理由は、囚われた姫を助けたいと思ったからです」
→ 「理由は〜からです」がねじれ。
⭕「勇者が魔王城に乗り込んだのは、囚われた姫を助けたかったからだ」
このように、「〇〇は」で始めた文を「〜こと(だ/です)」「〜という〇〇だ」で受ける意識を持つだけで、ねじれの大半は未然に防げます。
まとめ
ねじれ文の正体は「主語と述語の不一致」であり、一文が長くなるほど起きやすくなります。見つけ方のポイントは「主語と述語だけを抜き出す」「声に出して読む」の2つ。直し方は「一文を短く」「主述を近づける」が基本です。
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