なろうランキングの画一化問題|検索エンジンと同じ構造的病を考える

2020年3月29日

「小説家になろう」のランキングを開いて、 「また同じような作品ばかり並んでいる」 と思ったことはありませんか。追放系、ざまぁ系、スローライフ系——タイトルを見ただけで展開が予想できてしまう作品が上位を席巻している。

この状況に対する批判は2020年頃から繰り返し聞こえてきます。しかし 「作品の質が下がった」というだけの批判では、問題の本質は見えない のです。

実は、まったく同じ構造の問題が別の世界でも起きていました。Googleの検索結果を埋め尽くした 「いかがでしたか?」ブログ です。今回はなろうランキングの画一化をGoogle検索との類比で分析し、創作者が取るべき戦略を考えていきましょう。

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ランキングの画一化はなぜ起きるのか

まず構造を整理します。なろうのランキングと検索エンジンには、 驚くほど共通する力学 が働いています。

要素Google検索なろうランキング
指標検索順位(PageRank等)日間・週間・月間ポイント
最適化行動SEO対策ランキング対策(タグ・タイトル・投稿タイミング)
結果いかがでしたか?記事 の量産テンプレ作品 の量産
構造的原因指標に最適化すると質が均質化する同上

Googleでは「検索上位に表示される記事」を分析して同じ構造の記事を量産する手法が広まりました。ユーザーの検索意図に答えることよりも、 アルゴリズムに好まれることが目的化した のです。

なろうでもまったく同じことが起きています。 「どうすればランキングに載るか」を分析して、その要素を再現する ——それ自体は合理的な行動です。問題は、全員が同じ戦略を取ると結果が均質化することにあります。

画一化の構造を因数分解する

なぜ「全員が同じ方向を向く」のか。 3つの力学が連鎖 しています。

力学1:報酬系のフィードバックループ

ランキング上位 → 読者の流入 → ポイント増加 → さらに上位 → さらに読者が来る

この 正のフィードバックループ により、一度ランキングに載った作品は加速度的にポイントを積みます。そして後発の作者は「あの作品と同じ要素を入れれば同じループに乗れるのでは」と考えます。結果、似た作品が増えるのです。

力学2:タイトルのSEO化

なろうのタイトルは 検索エンジンのmeta descriptionと同じ役割 を果たしています。「追放された俺が実は最強で〜」のような長文タイトルは、内容を説明するための文ではなく、 読者のクリックを獲得するためのキャッチコピー です。

これはGoogle検索における「タイトルタグの最適化」と同じ原理です。 クリック率を最大化するタイトル が研究され、広まり、結果として全員が同じようなタイトルを付けるようになる。

力学3:読者の行動パターン

読者もまた 「見慣れたものを選ぶ」 傾向があります。心理学でいう 単純接触効果 です。「追放系」を何度も見かけるうちに、追放系を選ぶハードルが下がる。異質な作品はスルーされやすくなる。

力学内容Google検索での対応
フィードバックループ上位作品に読者が集中する上位サイトにリンクが集中しPageRankが固定化
タイトルのSEO化クリック率優先のタイトル設計meta descriptionとタイトルタグの最適化
読者の単純接触効果見慣れたジャンルが選ばれやすい見慣れたサイトがクリックされやすい

Googleはどう解決したか——そして何が学べるか

Googleは 「いかがでしたか?」問題 に対して、アルゴリズムの改修で対応しました。2022年の Helpful Content Update では、「検索エンジンのために書かれたコンテンツ」の評価を下げ、「ユーザーのために書かれたコンテンツ」の評価を上げる変更が行われました。

しかし結果は完全な成功とは言えません。 アルゴリズムが変わっても、最適化する側もまた適応する からです。SEO業界は新しいアルゴリズムを解析し、新しい最適化手法を編み出します。イタチごっこです。

なろうのランキングも同様です。仮にランキングアルゴリズムが変更されても、 「ランキング対策」というゲームのルールが変わるだけ で、最適化行動そのものは消えないでしょう。

ではどうすればいいのか。 答えはシステム側ではなく、創作者側にあります

創作者がランキングに振り回されないための戦略

ランキングの画一化を嘆いても何も変わりません。創作者として取るべき戦略を整理します。

戦略内容具体策
①テンプレを武器にする画一化の中で質の差で勝負するテンプレの型を守りつつ、キャラクターの深さで差別化する
②テンプレの外に出るランキング上位を最初から狙わないニッチジャンルで固定読者をつかむ。ファン経由で書籍化を目指す
③複数プラットフォームに分散なろう以外にも投稿するカクヨム、アルファポリス、ノベルアップ+等に同時展開
④SNSから直接読者を連れてくるランキングに依存しない集客Xでの発信、ブログでの解説記事、YouTube等

戦略① は「ランキングのルールの中で戦う」選択です。テンプレ作品が悪いわけではありません。読者が求めているものを提供するのは立派な技術です。 問題はテンプレの中で「この作品だけの魅力」を作れるかどうか にあります。

戦略② はランキング競争から降りる選択です。ニッチジャンルは読者数が少ない代わりに 熱量の高い固定ファン がつきやすい。書籍化は必ずしもランキング上位からだけ生まれるわけではありません。

個人的には ①と④の組み合わせ が現実的だと考えます。テンプレの型を活かしつつ、 SNSで自分の作品の魅力を自分の言葉で発信する 。ランキングに載るかどうかは結果であり、目的にすべきではないのです。

差別化の具体例を考えてみる

たとえば「追放もの」を書くとしましょう。テンプレの型は「パーティを追放される → 実は最強だった → ざまぁ」です。この型を守りつつ差別化するには、 テンプレが触れていない領域を深掘りする のが有効です。

テンプレが扱う部分テンプレが触れない部分(差別化ポイント)
追放の理由追放する側の内部事情や葛藤
主人公の覚醒覚醒までの孤独な期間の描写
ざまぁの瞬間ざまぁの後に残る空虚さ
新しい仲間との冒険なぜその仲間が主人公についてくるのかの動機設計

テンプレの型を壊す必要はありません 。型の「余白」を埋めるだけで、同じ追放ものでも印象はまったく変わります。Googleの世界でも同じことが起きました。Helpful Content Updateの後に評価されたのは、 テンプレ構造を持ちつつも独自の知見や体験を加えた記事 でした。なろうのランキングでも、いずれ同じことが起きるのではないでしょうか。

重要なのは 「ランキングを使う」のと「ランキングに使われる」のは違う ということです。ランキングの仕組みを理解し、タイトルやタグを最適化するのは戦術として正しい。しかしランキングの要求に作品そのものを合わせてしまうと、書きたかったものが何だったのかわからなくなります。道具は使いこなすもので、道具に使われるものではありません。

まとめ

ポイント内容
画一化の本質指標に最適化する全員が同じ方向を向く構造的問題
Google検索との共通点フィードバックループ、タイトルSEO化、単純接触効果
システム的解決の限界アルゴリズム変更はイタチごっこに終わりやすい
創作者の戦略テンプレ+差別化、ニッチ路線、プラットフォーム分散、SNS集客

なろうランキングの画一化は、 個々の作者の質が低いから起きているのではありません 。全員が合理的に行動した結果、全体が均質化するという 構造的な問題 です。だからこそ「最近のなろうは〜」と批判しても何も変わらないのです。

変えられるのは自分の戦略だけです。ランキングという波にどう乗るか、あるいは乗らないか。 その判断を「自分の作品で何を届けたいか」から逆算して決める 。それが、画一化の渦の中で自分の物語を守る唯一の方法ではないでしょうか。

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