表現者として目を離せなかった欅坂46|アイドルが物語を纏うとき

2020年7月22日

こんにちは。腰ボロSEです。

2020年10月、欅坂46は活動を終了し、櫻坂46として生まれ変わりました。

私が欅坂46を見始めたのは活動終了の8ヶ月前くらいからでした。それまでは「よくある48・46シリーズのアイドルグループなんでしょ」くらいの認識でした。ですが初めて聴いた『サイレントマジョリティー』によって、認識は180度変わりました。

どのバンドよりもロックで、挑発的なのに繊細。 アイドルという枠組みを完全に超えた「表現」 がそこにありました。そして2020年10月のラストライブを最後に欅坂46は幕を閉じ、櫻坂46として新たな歴史を歩み始めました。現在、櫻坂46はメンバー33名で活動を続け、2025年には全国ツアー「5th TOUR 2025 “Addiction"」を開催するまでに成長しています。

今回は、表現者・創作者としてなぜ欅坂46から目を離せなかったのか、そしてそこから何を学べるのかを考えます。

創作ノウハウ200超|小説の書き方ガイド

欅坂46が他のアイドルと決定的に違ったこと

欅坂46が他のアイドルグループと一線を画していた理由は明確です。 グループ全体で一つの物語を体現していた ことです。

通常のアイドルは「可愛い」「元気」「笑顔」といったポジティブな要素を前面に出します。ファンに対して「応援してくれてありがとう」と感謝するのが常識です。ですが欅坂46は違いました。『サイレントマジョリティー』では 「大人たちに支配されるな」 と問いかけ、『不協和音』では 「僕は嫌だ」 と叫びました。 アイドルが観客に反抗する という構図は前代未聞でした。

これは小説の「信頼できない語り手」に似ています。読者(ファン)の期待を裏切ることで、逆に深い没入感を生む。「このグループは次に何をするのか予測できない」という緊張感が、エンターテイメントとしての吸引力になっていたのです。

要素一般的なアイドル欅坂46
楽曲のテーマ恋愛、友情、青春の肯定社会への疑問、反抗、自我の葛藤
パフォーマンスの姿勢笑顔で観客を楽しませる真剣な表情で作品を届ける
センターの役割グループの顔として人気を集める物語の主人公として感情を体現する
メンバーの個性各自が個別にキャラを立てる全員で一つの世界観を構築する
ファンとの関係「応援してくれてありがとう」「大人たちに支配されるな」というメッセージ

特に衡撃的だったのは、衣装やステージングの世界観です。通常のアイドルがカラフルで華やかな衣装なのに対し、欅坂46は モノトーンの軍服や制服 を着ることが多かった。これは明らかに「アイドルらしさ」を意図的に排除した演出です。観客に「可愛い」と思わせるのではなく、 「かっこいい」「怖い」「美しい」 と思わせる。この差異化が、他のどのアイドルグループとも被らない独自のポジションを生みました。

小説でも同じことが言えます。 読者の期待に応えることだけが正解ではない 。期待を裏切ることで、読者は 「この作者は次に何をするのかわからない」という緊張感を持ち、もっと読みたくなる。欅坂46はそれをアイドルの世界で実証したのです。

特に衝撃的だったのは、 ファンに対して迎合しない姿勢 です。通常のアイドルはファンの期待に応えることが最優先です。ですが欅坂46は、ファンに向かって「大人たちの言いなりか?」と問いかけました。 アイドルが観客に反抗する という構図は前代未聞でした。

平手友梨奈というキャラクターの凄み

欅坂46を語る上で、センターの平手友梨奈さんの存在は避けて通れません。

創作者の目から見て、平手友梨奈さんは 「フィクションの主人公がそのまま現実に出てきたような存在」 でした。笑わない。媚びない。楽曲の世界観に完全に没入する。パフォーマンス中の表情は演技ではなく、本気で感情を叩きつけているように見えました。

平手友梨奈の表現の特徴創作者が学べること
笑わないアイドル「期待される演技」を拒否するキャラクターの強さ
楽曲ごとに別人になるキャラクターの多面性と変容の描き方
感情を押し殺す時の表現「語らないことで語る」技術
ステージでの孤独感集団の中の孤立を表現する方法
怪我をしてもパフォーマンスを続ける表現者の覚悟と、「ここで止めない」という決断

小説のキャラクターとして平手友梨奈さんのような人物を描こうとしたら、おそらく「リアリティがない」と言われるでしょう。 現実にフィクションが追いついていない 稀有な例です。

ただし、平手さんの表現から学べる「キャラクターの作り方」はあります。それは 「言葉ではなく行動で語る」 という原則です。平手さんはインタビューで多くを語りませんでした。ですがステージ上でのパフォーマンスがすべてを物語っていました。小説でも、キャラクターの内面を説明で伝えるのではなく、 行動や仕草で読者に惟るせる という技術は、プロの作家ほど重視しています。平手さんのパフォーマンスが教えてくれるのは、まさにその「行動で語る」技術の極致です。

欅坂46が証明した「物語の力」

欅坂46がアイドルシーンに持ち込んだのは、 楽曲単体ではなく「物語の連続性」 でした。

『サイレントマジョリティー』で社会への疑問を投げかけ、『不協和音』で反抗の意志を叫び、『黒い羊』で集団の中の異物であることを受け入れる——この流れは、一人の主人公が成長しながら世界と対峙する ビルドゥングスロマン(成長物語) そのものです。

楽曲物語上の位置づけ創作における対応
サイレントマジョリティー主人公の目覚め。「このままでいいのか?」第1章:日常の違和感に気づく
二人セゾン仲間との出会いと別れの予感第2章:同志との絆と不安
不協和音社会との全面対決。「僕は嫌だ」クライマックス:敵との正面衝突
ガラスを割れ!閉塞感の中での暴走主人公の暴走と限界
黒い羊異物であることを受容する終章:自分自身との和解

この構造は、私たち小説家が物語を構築する際に使う 「主人公の変容アーク」 と完全に一致します。欅坂46は楽曲を通じて、数年間にわたる長編小説を「演じて」いたのです。

櫻坂46への転生——「終わり」と「始まり」の設計

2020年10月、欅坂46は活動を終了し、櫻坂46として再出発しました。このグループ名変更は、物語の観点から見ると 「主人公の死と転生」 に相当します。

欅坂46のまま活動を続けることもできたはずです。ですが、平手友梨奈さんの脱退後、グループの物語は一つの終着点を迎えていました。無理に続けるのではなく、 一度「死」を経験することで新しい物語を始める という選択は、創作者として非常に示唆的でした。

そして櫻坂46は見事に「転生」を果たしました。現在はメンバー33名にまで拡大し、四期生も加入。2025年には全国ツアー「5th TOUR 2025 “Addiction"」で京セラドーム大阪でのファイナル公演を開催するまでになっています。 欅坂46の「反抗」の物語は終わり、櫻坂46の「挑戦」の物語が始まっている のです。

物語の技法欅坂46→櫻坂46の場合小説での応用
死と転生グループ名の変更主人公の決定的な転換点
テーマの継承と発展反抗→挑戦へのシフト続編で前作のテーマを発展させる
新キャラクターの導入新メンバーの加入新シリーズでの新たな仲間
過去への敬意欅坂時代の楽曲を時折披露前作へのオマージュ

創作者が欅坂46から持ち帰るべきもの

最後に、創作者として欅坂46から学ぶべきことを整理します。

1つ目:「受け入れられること」を目的にしない表現の強さ。 ファンに迎合せず、自分たちの表現を貫く姿勢は、商業的なリスクを伴います。ですがそのリスクを取ったからこそ、欅坂46は唯一無二の存在になれました。小説も同じです。 読者に好かれることよりも、自分が書きたいものを書く覚悟 が、結果的に最も強い作品を生みます。

2つ目:グループ(キャラクター群)で一つの物語を語る技法。 個々のキャラクターが際立つだけでなく、全員で一つのテーマを体現する。群像劇を書くとき、この視点は極めて重要です。

3つ目:「終わらせる勇気」の価値。 欅坂46は人気絶頂期に活動を終了しました。連載が人気のうちに完結させることの難しさと大切さを、彼女たちの決断が教えてくれます。物語は惰性で続けるものではなく、 「ここで終わる」という決断があって初めて物語は完成する のです。そして、終わらせたからこそ、櫃坂46という新しい物語を始めることができた。創作者として、 「終わらせる勇気」こそが次の物語を始める鋥 だということを、欅坂46は身をもって示してくれました。

どうですか、書ける気がしてきましたか? さあ、今日も物語を書きましょう。あなたの傑作を待っています。


関連記事

小説の「テーマ」とは何か|なぜ必要で、どう決めるのか

読者を泣かせる小説の書き方|感動型ストーリーの設計術

エタらない秘訣|連載を完結させる5つの工夫

この記事が参考になったら、ブックマーク or シェアしていただけると励みになります。

腰ボロ作家について
創作の「設定資料」と「物語の書き方」を中心に、550記事以上を公開中。
サイトトップX(Twitter)

よく読まれている記事

小説の書き方本をもっと読むなら → Kindle Unlimited