ITエンジニアがラノベ作家を目指すとき|技術屋の思考を創作に活かす5つのステップ

2025年8月2日

こんにちは。腰ボロSEです。

「ITエンジニアの経験は、小説を書くときに何かの役に立つのか?」——私自身、IT企業でSEとして15年働きながら、この疑問をずっと抱えていました。

結論から言えば、技術屋の思考は創作と相性がいいです。ただし、そのまま持ち込めば万事解決というわけではありません。活かせる部分と、意識的に切り替えなければいけない部分があります。

この記事では、ITエンジニアがラノベ作家を副業として始めるための5つのステップを、実体験をまじえながら解説します。

創作ノウハウ200超|小説の書き方ガイド

エンジニアの思考が創作に効く理由と落とし穴

論理的思考は「プロット」で威力を発揮する

エンジニアは日常的に「AならばB、BならばC」という因果関係を考えます。この思考は、物語のプロット設計にそのまま活きます。

「この出来事が起きたら、このキャラクターはこう動くはず」「この伏線を張ったからには、ここで回収する」——これはまさにシステム設計と同じ構造です。要件定義でユースケースを洗い出すように、物語のシナリオを網羅的に検討できるのは、技術者ならではの強みでしょう。

要件定義の癖——「正解がある」前提を捨てる

ただし、落とし穴もあります。

エンジニアは仕様書に「正解」があることに慣れています。要件を満たせばOK、満たさなければNG。しかし小説には正解がありません。「このキャラクターの行動は仕様書のどこに書いてある?」と聞きたくなる瞬間が来ますが、そこは自分で決めるしかないのです。

エンジニアの思考創作に活きる場面切り替えが必要な場面
論理的な因果推論プロット設計・伏線管理キャラクターの「非合理な行動」を許す
網羅的な場合分け世界観設定・ルール構築読者が必要としない設定を切り捨てる
ドキュメント化の習慣アウトラインや設定資料の整理書くことが目的化して本文が進まない
コードレビューの経験推敲・他者フィードバックの受容「バグ」ではなく「味」として残す判断

IT企業で15年働いて小説に効いた経験は「障害対応」だったの記事でも書きましたが、障害対応の経験——限られた情報から状況を推測し、仮説を立て、最善手を打つ——はそのまま物語のクライマックスの構築に通じます。

Step 1:インプット設計——好きな作品を「分解」する

エンジニアには馴染み深いことですが、「なぜこれが動くのか」を理解するには、まず分解する必要があります。

好きなラノベを5冊選んでください。そして、以下の観点で分解してみてください。

構成:何章構成か。起承転結のどこで何ページ使っているか

テンポ:会話と地の文の比率はどれくらいか

冒頭:最初の3ページで読者を掴む仕掛けは何か

キャラクター:主人公の初登場シーンでどんな情報を出しているか

これは「好きだから読む」のインプットとは別の作業です。エンジニアがOSSのソースコードを読むときの目線に近い。「なぜここはこの実装なのか」と問いながら読むことで、「面白い」の正体が構造として見えてきます。

ただし、分析に没頭しすぎて読書の楽しさを失うのは本末転倒です。1周目は純粋に楽しんで、2周目で分析する。この二段構えがおすすめです。

Step 2:プロット設計——設定資料で「要件定義」する

エンジニアが最も力を発揮するのがこのステップです。

物語を書く前に、以下の「設定3点セット」を作りましょう。

1. 物語の前提(要件定義書)

「どんな話か」を100字以内で書けるようにします。いわゆるログライン(一行あらすじ)です。

例:「腰を壊したSEが、異世界に転生して回復魔法の使い手になるが、回復魔法は自分の腰には効かない」

2. キャラクター設定(ER図的に考える)

キャラクター同士の関係性をER図のように図示すると、人間関係の抜け漏れが見えます。「この二人の間にはどんな感情の矢印があるか?」を明確にしておくと、シーンを書くときに迷いが減ります。

3. 世界観ルール(仕様書)

ファンタジーなら魔法のルール、SFなら技術の制約。制約があるからこそ物語が面白くなるという原則は、システム設計と同じです。「何でもあり」の世界は、実はいちばん書きにくいのです。

エンジニアにありがちなのは、この設定作業が楽しすぎて永遠に終わらないことです。設定資料が100ページを超えても1行も本文が書けていない——という状態には気をつけてください。「とりあえず動くもの」を先に出す。アジャイル的な発想がここでも有効です。

Step 3:執筆習慣の設計——「日次バッチ」で書く

エンジニアは、仕組みで回すことに慣れています。執筆もまた、モチベーションではなく仕組みで回すものです。

1日500字の「日次バッチ処理」

毎日1,000字は書きましょう——と言いたいところですが、いきなりは無理です。まず500字から始めてください。原稿用紙1.25枚。これを毎日の「日次バッチ」として処理します。

500字 × 365日 = 182,500字。ラノベ1冊が約10万字ですから、1年で1.8冊分 の分量になります。

1日の執筆量年間文字数ラノベ換算
500字182,500字約1.8冊
1,000字365,000字約3.6冊
2,000字730,000字約7.3冊

大切なのは「休まないこと」ではなく、「再開できる仕組み」を作ることです。cronジョブと同じで、1回コケてもリトライできるようにしておく。具体的には、前日の最後の1文を途中で止めておくのが効果的です。次の日、続きを書くところから入れるので、起動コストが下がります。

書く時間は「見つける」ものではなく「設計する」ものでも詳しく書いていますが、兼業作家にとっていちばん大事なのは時間の「設計」です。通勤時間、昼休み、寝る前の30分。使えるスロットは意外とあります。

Step 4:推敲——「コードレビュー」のつもりで磨く

一次稿が書き上がったら、推敲に入ります。ここもエンジニアの経験が活きるステップです。

セルフレビューの3パス

パス目的チェック内容
1回目ロジックチェックプロットに矛盾はないか。伏線の回収漏れはないか
2回目コードスタイル(文体)チェック同じ文末が3回連続していないか。同じ描写が繰り返されていないか
3回目UXチェック(読者体験)テンポは適切か。読者が離脱しそうな箇所はないか

コードレビューと同じで、1回の推敲で全部を見ようとしないこと が重要です。目的を絞って3回に分けるほうが、結果的に品質が上がります。

また、他者からのフィードバックも積極的に受けましょう。Web小説投稿サイトのコメントは、ユーザーテストのフィードバックと同じです。「面白い」よりも「ここで読むのをやめた」という情報のほうが、改善に直結します。

Step 5:公開と収益化——「まずはリリース」の精神で

完璧を求めて公開しない——これはエンジニアが陥りやすい罠です。

Web投稿サイトで連載を始める

「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」など、Web小説投稿サイトは無料で使えるプラットフォームです。いわばGitHubのようなもので、まず公開して反応を見る。完璧でなくていいので、週1〜2回の更新ペースを維持する ことが最優先です。

Web小説投稿サイト徹底比較で各プラットフォームの特徴を整理していますので、参考にしてみてください。

収益化のルート

ルート難易度概要
Web投稿サイトの収益プログラム★☆☆カクヨムのリワード、アルファポリスのスコア報酬など
Kindle出版(KDP)★★☆自分でKDP登録して電子書籍化。ロイヤリティ最大70%
書籍化(出版社からのオファー)★★★Web連載でPVが伸びれば出版社から声がかかることも

最初から収益を期待しすぎないことも大切です。最初の1年は「書く力を鍛える期間」と割り切って、まず1本を完結させることを目標にしてみてください。KDP出版ガイドも参考になります。

まとめ

ステップ内容エンジニアの強みが活きるポイント
Step 1インプット設計OSS的に作品を「分解」する目線
Step 2プロット設計要件定義・ER図・仕様書の思考法
Step 3執筆習慣設計仕組みで回す「日次バッチ」方式
Step 4推敲コードレビューの3パス手法
Step 5公開・収益化「まずはリリース」のアジャイル精神

ITエンジニアの経験は、想像以上に創作に活きます。論理的思考はプロットに、ドキュメント化の習慣は設定資料に、コードレビューの経験は推敲に。ただし、「正解がある」前提を手放すことだけは意識してみてください。物語に仕様書はありません。あなたが書いた言葉が、そのまま仕様になるのです。

どうですか、書ける気がしてきましたか? エンジニアとしてコードを書いてきたあなたには、すでに「構造を設計する力」と「根気よくデバッグする力」があります。あとは物語という新しい言語に向き合うだけです。もし悩むことがあったら、このブログに戻ってきてください。同じように初心者だった私が、基礎から応用まで気づいたことを書き綴っています。

さあ、今日も物語を書きましょう。あなたの傑作を待っています。


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