【映像×創作】『アナと雪の女王2』から学ぶ「続編のジレンマと赦しの構造」

2020年1月7日

2019年、全世界で14億ドル以上の興行収入を記録した『アナと雪の女王2』。前作の「Let It Go」があまりにも強烈だったため、続編への評価は賛否が分かれました。しかし、創作者として分析すると、本作は前作とはまったく異なる物語構造に挑戦しており、「続編をどう設計するか」という問いに対する見事な回答になっていると感じます。

私自身——エルサの物語は「罪と罰」から「赦し」へ移行した——と考えています。前作でエルサは自分の力を恐れ、自ら閉じこもるという「罰」を受けていた。本作では、その力の起源を辿り、先祖の過ちを知り、赦すという構造になっています。なぜこの構造が続編として正しかったのか。3つの仮説を立てて考えてみました。

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仮説1:「自己受容の先にある問い」が続編の正当性を生む

前作のテーマは「自己受容」でした。ありのままの自分を受け入れる——これは美しいテーマですが、物語としては完結しています。だからこそ、続編が難しいのです。「自分を受け入れました」の先に、何の物語があるのか。

本作が出した答えは、「自分を受け入れたあと、自分のルーツと向き合う」でした。エルサの魔法の力はどこから来たのか。なぜ彼女だけがこの力を持っているのか。前作では「個人の問題」として処理されていた力の起源が、本作では「一族と国の歴史の問題」に拡張されています。

これは非常に賢い続編設計です。『ダークナイト』シリーズでクリストファー・ノーラン監督が使った手法と同じ原理ですね。1作目『バットマン ビギンズ』が「なぜ戦うのか」という個人の問いだったのに対し、2作目『ダークナイト』は「正義とは何か」というシステムの問いに拡張されている。個人から社会へ、問いのスケールを上げることで続編の正当性が生まれるのです。

小説の続編を書くときにも、この発想は直接使えます。1巻で主人公の内面的な問題を解決したなら、2巻ではその解決が外部の世界とどう衝突するかを描く。「自分を受け入れた主人公が、自分を受け入れない社会とどう向き合うか」——この拡張の方向性は、ほぼあらゆるジャンルで有効ではないでしょうか。

仮説2:「ダブルヒロイン」の分離が二重の物語を可能にする

前作ではアナとエルサはほとんどの時間を別々に過ごしていましたが、それは「再会」というゴールに向かう一方向の物語でした。本作では、中盤でアナとエルサが意図的に分離させられ、それぞれが異なるテーマの物語を同時に進行させます。

エルサは「力の起源と向き合う」という自己探求の物語を進め、アナは「エルサがいない世界でどう行動するか」という自立の物語を進めます。この分離が巧いのは、前作で「エルサを追いかける」ことが行動原理だったアナが、本作では「エルサなしでも正しいことをする」という成長を遂げるからです。

『ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔』でトールキンが使った手法と同じ構造です。フロドとサムの旅、アラゴルンたちの戦い——仲間を分離させることで、それぞれのキャラクターが「一人で」試される状況を作り出しています。集団の中では見えなかったキャラクターの本質が、分離によって露わになるのです。

ダブルヒロインや双子主人公、バディものの続編で悩んでいる方は、この「分離と独立成長」の構造を検討してみるといいかもしれません。二人をくっつけたままだと前作の繰り返しになりがちですが、分離させれば「一人でも立てる」ことを証明する新しい物語が生まれます。

仮説3:「先祖の罪への赦し」が個人の物語を神話に昇華させる

「赦し」のテーマは、本作を単なるアドベンチャー映画から一段上に引き上げている要素です。エルサが辿り着いた真実は、自分の祖父がノーサルドラの民を裏切っていたというものでした。エルサの力は、その罪の贖いとして次の世代に与えられた「修正の手段」だったのです。

この「先祖の罪を子孫が引き受ける」構造は、北欧神話やギリシャ悲劇に通じるモチーフです。オイディプス王は自覚なく父を殺し母を娶るという先祖の呪いに巻き込まれましたが、エルサの場合は呪いではなく「赦す力」を与えられている点が新しい。罰ではなく赦しで物語を閉じるのは、ディズニーならではの前向きなメッセージですが、構造として見ると非常に深い設計です。

ここで創作に応用できるのは、キャラクターの「特別な能力」に歴史的な理由を後付けするという技法です。1巻の時点では「なぜか力を持っている」でよかったものに、2巻で「先祖が犯した罪の贖いだった」と歴史を結びつける。能力の起源に一族の物語を接続すると、個人の冒険が世代を超えた叙事詩に拡張されます。

『NARUTO』でうずまきナルトに九尾が封印された理由が、父・ミナトの決断であり、さらにはうちは一族の因縁に遡るという構造は、まさにこの「個人→一族→歴史」の拡張パターンの好例です。

あなたの物語に活かすなら

『アナと雪の女王2』の続編設計から、3つのヒントを抽出できます。

1. 続編では問いのスケールを上げる

作品1作目の問い2作目の問い
アナ雪自分を受け入れられるか(個人)自分のルーツとどう向き合うか(歴史)
ダークナイトなぜ戦うのか(個人)正義とは何か(社会)
あなたの作品主人公の内面的葛藤その解決が社会とどう衝突するか

2. バディ・ダブル主人公を分離させる

続編で二人を一緒に行動させ続けると、前作の焼き直しになりがちです。中盤で意図的に分離し、それぞれが「一人でも物語の主人公になれる」ことを証明する構造を作ってみてください。再合流したとき、二人の関係は前作より一段深くなっているはずです。

3. 能力の起源に一族の歴史を接続する

あなたのキャラクターが持つ特別な力に、「なぜその力が存在するのか」という歴史的理由を後付けしてみる。先祖の罪、一族の使命、世代を超えた約束——個人の能力が歴史と接続されたとき、物語のスケールは一段上がります。

まとめ

『アナと雪の女王2』は、問いのスケール拡張、ダブルヒロインの分離と独立成長、そして先祖の罪への赦しという3つの構造で、続編のジレンマを正面から突破した作品でした。勉強になりました。

続編を書くことは、多くの創作者にとって最も悩ましい課題の一つです。前作を超えなければならないプレッシャー、同じことを繰り返してはいけないという制約。しかし本作が示しているのは、「前作の答え」を出発点にして問いを拡張すれば、続編は自然と前作より壮大な物語になるということです。

どうですか、書ける気がしてきましたか。もし続編の設計で悩んだら、このブログに戻ってきてください。あなたのキャラクターが1巻で見つけた「答え」の先に、きっと新しい「問い」が待っていますよ。

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腰ボロ作家について
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