創作家系図の作り方|血縁・養子・家名を整理する物語作家向けガイド
主人公の父には前の結婚で生まれた子がいて、母は名家の跡取り。主人公自身は叔父の家で育ったことにしたい。家族の設定を足していくうちに、誰が誰の子で、どの家を継ぐのか、作者でも迷うことがありますよね。
そんなときに作っておきたいのが、創作用の家系図です。親や兄弟を線で結ぶと、出自や相続を確認しやすくなります。ただ、全員を同じ姓でそろえたり、血縁も養子も同じ線で結んだりすると、かえって関係がわからなくなることもあります。
この記事は、物語で必要な関係から家系図を作るためのガイドです。架空の朝倉家を例に、人物の整理、線の引き方、家名の継承、読者への見せ方まで順番に考えていきましょう。
先に結論|家系図を作る6つの手順
家系図は、紙とペンでも表計算ソフトでも作れます。使う道具を決める前に、次の順番で設定を整理してみてください。
| 手順 | 決めること | できあがるもの |
|---|---|---|
| 1 | 中心人物と、図で確認したいこと | 登場させる親族の範囲 |
| 2 | 名前、生年、出生上の親 | 人物一覧 |
| 3 | 血縁、婚姻、養子などの関係 | 家族関係の下書き |
| 4 | 家名、財産、当主の継承 | 作品世界の家のルール |
| 5 | 世代ごとの配置と、線の意味 | 読み取れる家系図 |
| 6 | 年代と、情報を明かす順番 | 矛盾とネタばれを確認した図 |
最初から一族の歴史を全部作る必要はありません。まずは主人公の出自や、今回の事件に関わる親族を整理すれば十分です。必要になった人物をあとから加えるほうが、執筆にも取りかかりやすいですね。
1.中心人物と、家系図の目的
家系図を作る最初の一歩は、この図で何を確認したいのかを一文にすることです。「主人公が誰の子か」「次の当主候補が誰か」では、必要な人物も情報も違います。
相続争いの物語なら、先代当主の子どもや養子、婚姻によって家に入った人物が重要になります。一方、主人公の出生の秘密を描くなら、出生上の親、育てた人、それを知る親族を優先したいところです。
| 物語で扱うこと | 家系図に残したい情報 |
|---|---|
| 後継者争い | 親子関係、出生順、養子縁組、継承の条件 |
| 出生の秘密 | 出生上の親、養親、育ての親、改名 |
| 家同士の同盟 | 配偶者、婚約相手、それぞれの実家 |
| 一族の歴史 | 歴代当主、分家、婚姻や養子による家の変化 |
| 読者の理解の補助 | 本編に登場する人物と、既に明かした関係 |
ここからは、説明用に用意した架空の一族「朝倉家」を例に、家系図を作っていきます。物語の中心は「朝倉家の次の当主を誰にするか」です。主人公ユイには兄レンがいますが、レンは別の家の養子になっています。
この家系図で確認したいのは、長子のレンと、朝倉家に残るユイのどちらが家を継げるのかです。次の手順では、判断に必要な家族を書き出してみましょう。
この段階では、祖母のいとこや、名前しか出てこない遠い先祖まで作らなくて構いません。物語の判断に関わる人物から載せると、図の範囲を決めやすくなります。
2.登場人物の名前・年齢・親子関係を書き出す
中心人物から家族を並べる
まずは主人公を一人書き、その親、きょうだい、祖父母へと広げます。名前、年齢、主人公から見た続柄、出生上の親を書いておくと、あとから線で結ぶときに迷いません。
ここでは、前の節で紹介した架空の朝倉家を、次のような人物一覧にしてみます。年齢は物語開始時点の設定です。生年は、あとで回想や当主交代の時期を確認するために残しておきます。
| 名前 | 主人公から見た続柄 | 生年・年齢 | 出生上の親 | 家族内の立場 |
|---|---|---|---|---|
| 朝倉ユイ | 本人 | 510年・20歳 | 父アキラとサエ | 朝倉家に残った主人公 |
| 水瀬レン | 兄 | 507年・23歳 | 父アキラとサエ | 別家の養子になった長子 |
| 朝倉アキラ | 父 | 485年・45歳 | ミナと祖父アキラ | 現当主 |
| 朝倉サエ | 母 | 487年・43歳 | 今回の図では省略 | 現当主の配偶者 |
| 朝倉ミナ | 父方の祖母 | 460年・70歳 | 今回の図では省略 | 先代当主 |
| 朝倉アキラ | 父方の祖父 | 458年・72歳 | 今回の図では省略 | ミナの配偶者 |
| 水瀬トオル | 兄の養父 | 480年・50歳 | 今回の図では省略 | レンを養子に迎えた人物 |
生年は王国暦で、物語の開始年は530年です。表の年齢は、その年の誕生日を迎えた時点でそろえています。
母方の祖父母など、今回の継承問題に関わらない人物は省略しました。一覧を作る段階では、誰と誰が親子なのかを言葉で確認できることを優先してください。線の引き方は、そのあとに考えれば大丈夫です。
同名の人物がいる場合は、続柄や世代を添える
今回の例では、父と祖父がどちらも「朝倉アキラ」です。設定メモでは「父アキラ」「祖父アキラ」と書き、図には年齢や役職を添えると区別できます。同名の人物がいない家なら、この作業は必要ありません。
親子に同じ名前を付けるなら、その家で名前を受け継ぐ理由も考えてみてください。祖先への敬意なのか、当主が代々名乗る継承名なのかで、人物が背負う期待も変わります。
朝倉家では、ミナの配偶者がアキラで、息子にも同じ名を付けたことにします。息子が父の名前を誇りにしているのか、比較されるのを嫌がっているのかは、作者が決めるところですね。
会話では、家族が普段使う愛称や続柄で呼び分けます。「先代」と呼ぶなら、実際に当主だった人物かも確認したいところです。今回の先代当主はミナなので、祖父アキラを先代と書くと設定が食い違います。
3.血縁・婚姻・養子を別々に整理
次は、人物同士の関係の整理です。親子の出自と、現在の家族としての立場を分けて記録します。
朝倉家なら、ミナと祖父アキラが夫婦で、その二人の子が現当主アキラです。現当主とサエの子がレンとユイで、レンには別に養父トオルがいます。この順に確認すると、養子になったあともレンとユイの出生上のきょうだい関係は残るとわかります。
再婚と、親の異なるきょうだい
再婚を設定するときは、子どもを現在の夫婦の下へ一括で並べないようにします。誰と誰のあいだに生まれた子なのかを、子どもごとに確かめてください。
たとえばレンだけが現当主と前の配偶者の子なら、ユイとは父を共有する異母きょうだいになります。反対に、サエが以前の結婚で産んだ子なら、ユイとは母を共有する異父きょうだいです。サエの連れ子に対して、現当主が継父という立場になる場合もあります。
| 関係 | 記録する内容 | 物語で考えたいこと |
|---|---|---|
| 異母きょうだい | 共通の父と、それぞれの母 | 母の実家による支援の違い |
| 異父きょうだい | 共通の母と、それぞれの父 | 家名や所属する家の違い |
| 連れ子と継親 | 出生上の親、親の再婚相手 | 親として接しているか、どう呼ぶか |
| 養子と養親 | 出生上の親、養親、縁組の時期 | 相続上の立場と、本人の希望 |
| 育ての親・後見人 | 養育や保護を担った人物 | 養子縁組の有無と、本人の認識 |
養子と育ての子の違い
叔父の家で育ったからといって、必ず叔父の養子とは限りません。生活の世話をした人、後見人、制度上の親は、別の人物でも成立します。
また、養親が叔父や叔母なら、養子と養親のあいだにも血縁があります。「養子だから血縁なし」とまとめず、出生上のつながりと養子縁組をそれぞれ記録しておきましょう。
レンについては「520年に水瀬トオルの養子になった」と決めれば、その年は13歳になる年です。そのころ既にユイと暮らしていたのか、離れてからも会っていたのかを考えると、現在のきょうだい関係も書きやすくなりますね。
4.家名・財産・当主の継承ルール
姓が同じでも、継ぐものは同じとは限らない
人物関係が決まったら、その世界の継承ルールを整理します。家名、財産、役職、代表権を分けると、後継者の立場を細かく作れます。
たとえばユイが朝倉姓を名乗っていても、それだけでは当主になる理由になりません。レンも水瀬姓になっただけで、朝倉家の継承資格を失うとは限らないのです。
| 項目 | 朝倉家で採用する架空のルール |
|---|---|
| 家名 | 他家の養子になると、その家の姓を名乗る |
| 当主の資格 | 朝倉家に属する成人の子から、現当主が後継者を指名する |
| 他家の養子の扱い | 朝倉家へ戻る手続きを終えるまでは指名されない |
| 財産 | 当主の地位と分け、子どもごとの取り分を決める |
| 対外的な代表 | 当主が務めるが、交渉を配偶者に任せることもある |
このルールなら、レンは長子でも、そのままでは次の当主に指名されません。現当主がレンを戻そうとする一方、ユイは自分が継ぐつもりで準備していた、という対立を作れます。
ここで表にしたのは、現実の相続制度ではなく朝倉家の設定です。歴史小説など実在の時代・地域を舞台にする場合は、その舞台の制度と照らし合わせてください。
婿入りと養子縁組は別の設定
娘が家を継ぐ設定では、配偶者がどんな立場になるのかも決めます。妻の姓を名乗ること、妻の実家に住むこと、妻の親と養子縁組をすることは、それぞれ別の設定です。
「婿養子に入った」と書くなら、誰の養子になったのかまで記録しましょう。単に妻の姓を名乗るだけなら、養子関係の線を引く必要はありません。
朝倉家の例では、ミナが家を継ぎ、配偶者アキラが朝倉姓を名乗ることにします。ミナの親との養子縁組はなく、当主の地位はミナから息子へ移ります。これなら祖父アキラは家族の一員でも、歴代当主には入りません。
ミナの親との養子縁組も設定するなら、その親を人物一覧へ加え、縁組の線を別に引きます。誰が何を継いだのかをたどれるようにすると、複雑な家でも説明しやすいですね。
あなたの物語に使えますよ
血縁上は最も近いのに家を継げない人、姓は違うのに財産を受け取る人、当主ではないのに外交を任される人。継承するものを分けると、それぞれ違う立場の人物を作れます。
一人が全部を受け継ぐ必要はありません。権利と役割の食い違いを一つ決めて、誰がその状態を変えたがっているのか考えてみてください。
5.図の配置と、線の引き方
上に親世代、下に子世代を配置
人物一覧と継承ルールができたら、図にしていきます。基本は上から祖父母、父母、主人公の世代です。配偶者は横に置き、その二人の子を下へ並べると関係をたどりやすくなります。
朝倉家なら最上段にミナと祖父アキラ、その下に現当主アキラとサエ、さらに下にレンとユイを配置します。養父トオルは親世代の横に置き、レンへ養子関係の線を引く形です。
出生順が重要なら、きょうだいは左から年長順など、図の中で並び方を統一してください。ただし、並んでいる高さだけで年齢を判断しないことも大切です。遅く生まれた叔父が甥より年下でも、系譜上は親の世代に位置します。
線の意味は凡例で明示
読者が線の意味を想像しなくて済むよう、図の端に凡例を置きます。次の表は創作用の一例です。
| 関係 | 表し方の例 |
|---|---|
| 出生上の親子 | 親から子への実線 |
| 婚姻 | 配偶者同士を結ぶ横線に「婚姻」の注記 |
| 養子縁組 | 養親から子への破線に「養子」の注記 |
| 離婚・死別 | 婚姻線に出来事と年を注記 |
| 婚約 | 婚姻とは別に「婚約」と明記 |
| 同居・後見 | 必要な場合だけ短い注記を追加 |
血縁、養子、婚姻を色だけで分けると、白黒印刷では見分けにくくなります。線種や文字も併用すると読み取りやすいですね。名前が長い場合や線が交差する場合は、家ごとに図を分けても構いません。
親族同士の婚姻があると、同じ人物を複数の経路からたどれます。一人の人物へ線を集めると読めなくなるなら、名前と生年を添えて別の場所にも載せ、「同一人物の再掲」と注記する方法もあります。
家系図と相関図は使い分け
家系図で確認するのは、親子、婚姻、養子などの関係です。「ユイはレンを尊敬しているが、家に戻ってほしくない」という気持ちは、家系図だけではわかりません。
感情や対立は別の相関図か、人物メモに書きましょう。家族としての関係と、現在の感情を分けると、きょうだいのまま敵対する人物も整理できます。一枚の図に好意、憎悪、秘密まで載せるより、確認したい情報を探しやすくなりますね。
6.年表と、読者に明かす順番の確認
現在の年齢から過去を確認
図ができたら、生年と出来事の年を見比べます。現在の年齢が自然に見えても、養子に出た年や当主交代の年まで戻すと、想定していた場面と合わないことがあります。
朝倉家なら、レンが養子になる520年にユイは10歳になる年です。「兄の顔を覚えていない」という設定にしたいなら、幼いころから離れていたなど、暮らしの経緯も必要になります。
| 確認する出来事 | 確かめること |
|---|---|
| 子どもの誕生 | 出生時の親の年齢と、その世界の生育条件 |
| 婚姻・再婚 | どの時期の相手との子なのか |
| 養子縁組 | 縁組した年齢、姓や所属が変わった時期 |
| 当主交代 | 前当主の退任・死亡と、後継者の年齢 |
| 回想場面 | その年に人物が生存し、同じ場所にいられたか |
長命種や転生者が登場するなら、出生からの年齢と外見年齢などを別に記録します。作品世界に合わせて確認する項目を増やせばよいのです。年表と家系図を照らし合わせると、親族関係だけでは気づかなかった食い違いも見つけられます。
作者用と読者用を分ける
作者用の家系図には、出生の秘密や偽名まで記録して構いません。ただし、それをそのまま巻頭や設定資料として公開すると、本編より先に秘密が伝わってしまいます。
『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』では、ルークがベイダーとの親子関係を告げられる場面があります。この種の開示を予定するなら、作者は初めから関係を把握しつつ、読者向けの図では開示前と開示後を分ける必要がありますね。
作者の資料では、実際の関係、人物が信じる関係、読者が知る関係を分けて記録します。レンを実子だと思っている人物と、養子だと知っている人物がいるなら、誰がどちらを知っているのかもメモしておきましょう。
公開用の図には「第1章終了時点」など、情報の範囲を付けると管理しやすくなります。秘密の人物を隠したいときは、不自然な空欄や「父親不明」の表示自体が手がかりにならないかも確かめてください。
親族間の婚姻は、共通の祖先から確認
家同士の婚姻を何世代も重ねる設定では、二人の共通の祖先をたどります。同じ姓だから近い親族とも、違う姓だから血縁がないとも限りません。
血縁の近さが確認できたら、その世界で婚姻できるのか、家はそれを望むのか、本人たちはどう考えるのかを分けて決めます。制度上は可能でも、家族として育った二人が望むとは限りません。反対に、家の都合で迫られ、断れば継承資格を失う設定も考えられます。
家系図には関係を記録し、選ぶ理由やためらいは本編で描きます。出生の秘密があとから判明する場合も、以前の会話で誰が何を知っていたのか説明できるようにしておきましょう。
家系図を作り始めるための記入テンプレート
まず一人分を埋め、親、配偶者、子へと広げてみてください。未定の項目は無理に決めず「未定」と残せば、確定した設定と区別できます。
| 項目 | 記入する内容 |
|---|---|
| 名前・続柄 | 現在の名、旧名、愛称、中心人物から見た続柄 |
| 生没年 | 生年、必要なら没年、物語開始時の年齢 |
| 出生上の親 | 親の名前。同名なら続柄や生年も添える |
| 婚姻・婚約 | 相手の名前、開始・終了の年 |
| 養子・養育・後見 | 相手の名前、関係の種類、始まった年 |
| 家への所属 | 現在の家、以前の家、姓が変わった時期 |
| 継承 | 家名、財産、役職のうち継ぐものと条件 |
| 情報の公開 | 実際の関係、知っている人物、本編で明かす場面 |
表を埋めたら、中心人物の親ときょうだいから線で結んでみましょう。その関係が本編のどこで必要になるのか、人物同士はどう呼び合うのかも考えます。図にある関係を一場面でどう見せるかまで考えると、本編へつなげやすくなりますね。
完成後のチェックリスト
最後に家系図を見ながら、本文や設定メモと照らし合わせます。とくに改名、再婚、養子縁組のあとで、呼び名や所属が古いままになっていないか確認してください。
• [ ] 中心人物と、家系図で確認したいことが決まっている
• [ ] 同名の人物を続柄、生年、役職などで区別できる
• [ ] 子どもごとに出生上の親がわかる
• [ ] 婚姻、養子縁組、同居、後見を混同していない
• [ ] 再婚前後の子どもと、それぞれの親をたどれる
• [ ] 家名、財産、当主の地位、代表権を分けて決めている
• [ ] 線の意味と、きょうだいの並び順を凡例に書いている
• [ ] 生年と、出生・婚姻・養子縁組・当主交代の年に矛盾がない
• [ ] 親族間の婚姻がある場合、共通の祖先と世界内の制度を確認している
• [ ] 公開用の図は、本編のその時点で明かした情報に合っている
まとめ|家族関係から、人物の選択へ
創作の家系図は、目的を決めて人物を一覧にし、血縁と婚姻、養子の関係を分けるところから作れます。そのうえで継承ルールを決め、図の配置を整え、年代と情報の公開範囲を確認すれば、執筆中にも使いやすい資料になります。
朝倉家なら、図からわかるのはレンがユイの兄で、別家の養子になっていることです。そこへ「ユイは家を継ぎたい」「父はレンを戻したい」という希望を足すと、家族が集まる場面で何を話すのかが見えてきますね。
まずは中心人物と、その人の選択に関わる家族を並べてみてください。家族の誰から何を求められ、本人はどう返すのか。そこまで考えられたら、家系図から物語の一場面を書き始められます。
さあ、今日も物語を書きましょう。あなたの傑作を待っています。
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