「ラノベを書いています」と会社で言えるようになるまで

こんにちは。腰ボロSEです。

面接で「あなたの強みは何ですか」と聞かれたとき、心の中では「10万字の長編を完結させる持久力です」と答えたい。でも口から出てくるのは「粘り強く課題に取り組む姿勢です」という、誰が言っても同じフレーズです。

今回は、兼業作家が会社や面接で「自分が書いている」ことをどう扱うべきかという話をします。正解はありません。でも、12年間の試行錯誤から見えてきたことはあります。

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最初の5年間は隠していた

入社してから5年くらいは、小説を書いていることを職場で一切言いませんでした。

理由は単純で、言ったところでプラスにならないと思っていたからです。「趣味は何?」と聞かれたら「映画鑑賞です」と答えていました。嘘ではないけれど、本当のことも言っていない。

特にIT企業では、技術以外の趣味を深く語る場面がそもそもありません。「休日は何してるの」「まあ、のんびりしてます」で会話は終わります。わざわざ「ライトノベルを書いています」と宣言する必要性を感じなかった。

もうひとつの理由は、「評価に影響するかもしれない」という恐れでした。本業に全力を注いでいないと思われるリスク。「小説書いてるから残業したくないんでしょ」と思われる可能性。実際にそう言われたことはありませんが、想像だけで十分に口を閉じる理由になりました。

バレた瞬間

結局、自分から言ったのではなく、バレました。

Webに投稿していた作品が書籍化されたとき、同僚がたまたま本屋で見つけたんです。ペンネームを使っていましたが、あとがきに「本業はSEです」と書いていた。「もしかして、お前?」という連絡がSlackで飛んできたときの心臓の音は、障害対応のアラートに匹敵しました。

覚悟していたよりも、周囲の反応は穏やかでした。「へえ、すごいじゃん」で終わる人がほとんどです。興味を持って聞いてくれる人もいれば、まったく関心を示さない人もいる。「読ませてよ」と言ってくれた先輩が、実際に読んだかどうかは定かではありません。

一方で、微妙な変化もありました。「あの人は副業で本を出してるらしい」という情報は、組織の中でゆっくり広がります。会議で何か提案したときに「さすが作家先生」と茶化されたり、残業を断ったときに「今日も執筆ですか」と言われたり。悪意があるわけではない。でもその一言のたびに、「やっぱり言わないほうが良かったか」と思う瞬間がありました。

「強み」としてどう活かせるか

面接に話を戻します。「あなたの強みは何ですか」という質問に対して、「小説を書いています」はどう機能するか。

結論から言うと、「直接言わないほうが無難だが、間接的に活かせる場面は多い」です。

小説を10年書いていると、言語化のスキルは確実に鍛えられます。長い文章を構造化する力、曖昧な要件を具体的な文に落とし込む力、相手の理解度に合わせて説明のレベルを調整する力。これらはすべて、ビジネスの現場で求められるスキルです。

面接では「前職で仕様書やドキュメントの品質改善に取り組みました」と言えばいい。事実ですから。10万字の長編を校正してきた人間のドキュメントレビュー能力は、平均的なSEよりは高いはずです。わざわざ「小説を書いているおかげで」と付け加える必要はありません。

プロジェクト管理の場面でも、連載を複数抱えて進捗を管理してきた経験は、そのままプロジェクトのタスク管理に転用できます。キャラクター設定で複数人の動機と行動を矛盾なく組み立ててきた能力は、ステークホルダー管理と本質的に同じです。

言えるようになった転機

私が職場で自然に「書いてます」と言えるようになったのは、入社8年目くらいからです。

転機は些細なことでした。新卒の後輩が「自分も趣味で小説を書いている」と雑談で話してくれたんです。それを聞いたとき、自分が何年も隠していたことがばかばかしく感じました。別に犯罪を犯しているわけではない。小説を書くことは、ランニングや楽器演奏と同じ、ただの「やっていること」です。

それ以降、聞かれたら普通に答えるようになりました。積極的にアピールするのではなく、聞かれたら隠さない。このくらいの距離感がちょうどいい。

面白いことに、周囲が知ってからのほうが、残業を断りやすくなりました。「今日は用事があるので」と言うだけで、何も聞かれなくなった。「あの人には、仕事以外にやっていることがある」と認識されていること自体が、ある種の防御壁になるのかもしれません。

「言う」か「言わない」かの判断基準

これから転職する方、あるいは今の職場で悩んでいる方に向けて、私なりの判断基準を書いておきます。

「言ったほうがいい」場面は、副業の届出が必要なとき、そして「隠すストレス」が執筆に支障をきたしているときです。隠し続けること自体がMPを消耗するなら、言ってしまったほうが楽になります。

「言わないほうがいい」場面は、副業禁止の会社にいるとき、そして直属の上司が「仕事一筋」を美徳とするタイプのとき。後者は制度の問題ではなく文化の問題なので、制度上OKでも空気がNGなら慎重になるべきです。

「どちらでもいい」場面が一番多いです。大半の同僚は、あなたが小説を書いていることに対して、良くも悪くもそこまで興味がありません。気にしているのは本人だけ、というケースがほとんどです。

ここまで読んで頂きありがとうございました。会社で「書いています」と言えるかどうかは、スキルの問題ではなく、環境と覚悟の問題です。でもどちらを選んでも、書くことは続きます。

さて、今日も物語を書きましょう。腰は壊しても、筆は折らない。

腰ボロSE

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腰ボロ作家について
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