接続詞ダイエット|「そして」「しかし」を削ると文章が垢抜ける
あなたの原稿の中で、「そして」「しかし」「また」は何回出てきますか?
試しに今書いているテキストで「Ctrl + F」してみてください。たぶん思っている以上に多いはずです。
接続詞は文と文をつなぐ便利な道具ですが、使いすぎると文章が重く、単調になります。逆に、不要な接続詞を削るだけで文章のリズムが軽くなり、読後感がぐっと垢抜けます。
この記事では、接続詞を「どこまで削れるか」「どう判断するか」を具体的に解説します。
なぜ接続詞を使いすぎてしまうのか
理由①:話し言葉の癖が抜けていない
日常会話では「それで、次に〜して、そしたら〜になって」と接続詞を多用します。これは音声コミュニケーションでは問題ありません。相手が目の前にいるからです。
しかし文章は音声ではなく黙読です。書き言葉に会話のテンポを持ち込むと、接続詞がノイズになります。
理由②:論理がつながっているか不安だから
「ちゃんと伝わっているだろうか」という不安から、接続詞を入れて関係性を明示したくなる。気持ちはわかります。ただ多くの場合、文脈がすでにつながりを示しているため、接続詞は保険のかけすぎです。
理由③:書いている最中は気づけない
執筆中は「次に何を書くか」に集中しているため、「そして」「しかし」が頻出していることに気づきにくい。これは推敲フェーズで初めて見えてくる問題です。
接続詞の種類と「削れる度」
すべての接続詞が同じわけではありません。種類によって削りやすさが違います。
| 種類 | 代表的な接続詞 | 役割 | 削れる度 |
|---|---|---|---|
| 順接(原因→結果) | だから、そのため、したがって | AだからB | ★★★ 高い |
| 逆接(反転) | しかし、だが、ところが | Aだが逆にB | ★★☆ 中くらい |
| 並列・添加 | そして、また、さらに、かつ | AもBも | ★★★ 高い |
| 転換(話題変更) | さて、ところで、では | 話を変える | ★☆☆ 低い |
| 補足・言い換え | つまり、要するに、なぜなら | Aを別の言葉で | ★★☆ 中くらい |
| 例示 | たとえば、具体的には | Aの例としてB | ★☆☆ 低い |
並列・添加と順接は特に削りやすいカテゴリです。文脈から関係が自明なことが多いためです。
Before / After 7連発
理屈より実例です。削る前と削った後を見比べてください。
例① 順接の「だから」を削る
Before:
朝から雨が降っていた。だから彼は傘を持って家を出た。
After:
朝から雨が降っていた。彼は傘を持って家を出た。
「雨が降っていた → 傘を持つ」は因果関係が自明。「だから」がなくても読者はつながりを理解します。
例② 並列の「そして」を削る
Before:
彼女はコートを脱いだ。そしてソファに腰を下ろした。そしてテーブルの上のコーヒーに手を伸ばした。
After:
彼女はコートを脱ぎ、ソファに腰を下ろした。テーブルの上のコーヒーに手を伸ばす。
動作の連続は、読点でつなぐ・文末の時制を変えるだけで流れが出ます。「そして」の連打は一本調子のリズムを作ってしまいます。
例③ 逆接の「しかし」を削る
Before:
この計画は理論上は完璧だった。しかし実行するのは容易ではなかった。
After:
この計画は理論上、完璧だった。実行は別の話だが。
逆接を削るのは少し高度です。文末の語調や語順を変えることで、「しかし」がなくても反転の空気を出せます。
例④ 添加の「また」を削る
Before:
この店はコーヒーが美味い。またケーキの種類も豊富だ。また店員の接客も丁寧である。
After:
この店はコーヒーが美味い。ケーキの種類が豊富で、店員の接客も丁寧。
「また」を3連打すると箇条書きの読み上げのようになります。並列はひとつの文にまとめるか、「また」は最大1回に絞りましょう。
例⑤ 補足の「つまり」を削る
Before:
彼は毎朝6時に起き、夜は10時に寝る。つまり規則正しい生活を送っているのだ。
After:
彼は毎朝6時に起き、夜は10時に寝る。規則正しい男だった。
前の文を読めば「規則正しい」ことは明らかです。「つまり」で念押しする必要はありません。
例⑥ 小説の地の文での「そして」
Before:
剣を構えた。そして敵に向かって踏み込んだ。そして一閃。刃が空を切る音が響いた。
After:
剣を構え、踏み込む。一閃——刃が空を切る音だけが残った。
アクションシーンで「そして」を使うと、動作のスピード感が消えます。 短文の連続+ダッシュで切れ味を出しましょう。
例⑦ ブログ文での「しかし」
Before:
WordPressは無料で使えるCMSです。しかしレンタルサーバー代は必要です。しかしそれを差し引いても、コストパフォーマンスは高いと言えます。
After:
WordPressは無料で使えるCMS。ただしレンタルサーバー代はかかります。それでもコストパフォーマンスは十分高い。
「しかし」が2回続くと論理が迷子になります。「しかし」を「ただし」「それでも」「一方で」など別の語に分散するだけでも印象は変わります。
接続詞を削る5つのルール
| No. | ルール | 解説 |
|---|---|---|
| 1 | 削ってみて意味が通るなら、削る | 最も基本的かつ最強のルール。迷ったら削って音読 |
| 2 | 同じ接続詞が2回連続したら、1つは必ず削る | 「そして……そして……」は目立つ |
| 3 | 1段落に接続詞は最大2つまで | 3つ以上あれば構成を見直すサイン |
| 4 | 順接と並列は、削っても伝わることが多い | 因果関係が自明なら「だから」は不要 |
| 5 | 転換と例示は残してよい | 「たとえば」「ところで」は話題の転換を助ける重要な標識 |
削るだけでなく「言い換える」テクニック
接続詞を完全に消す以外にも、同じ接続詞の連打を避ける言い換えが有効です。
| よく使いすぎる語 | 言い換え候補 |
|---|---|
| そして | (削除)/ 読点でつなぐ / さらに / 加えて |
| しかし | だが / ところが / 一方で / けれど / ただし |
| また | (削除)/ 同時に / さらに / 〜も |
| だから | そのため / したがって / ゆえに / (削除) |
| つまり | 要するに / 言い換えれば / (削除) |
ただし注意してほしいのは、類語に置き換えるだけで満足しないことです。真の目的は「不要な接続詞を減らすこと」であり、「しかし」を「だが」に変えただけでは根本的な密度は変わりません。まず削れるかを検討し、それでも必要なら言い換える——この順番を守ってください。
接続詞ダイエットの推敲フロー
以下の手順で推敲すると効率的です。
Step 1: Ctrl+F で「そして」「しかし」「また」「だから」を検索
↓
Step 2: ヒットした箇所に蛍光マーカーを付ける(エディタのハイライト機能)
↓
Step 3: 各箇所で「削除しても意味が通るか」を音読で確認
↓
Step 4: 通る → 削除 / 通らない → 言い換えを検討
↓
Step 5: 全体を通して音読し、リズムを確認
この5ステップで、あなたの文章から不要な接続詞の7〜8割は消えるはずです。
削りすぎの罠——ゼロにする必要はない
ここまで「削れ」と書いてきましたが、接続詞をゼロにする必要はありません。
接続詞には「次の文の方向を予告する」という重要な機能があります。特に逆接(しかし、だが)は読者に「ここから方向が変わりますよ」と伝える標識です。これをすべて削ると、読者が文脈を見失います。
目安としては以下を参考にしてください。
| 文章の種類 | 400字あたりの接続詞の目安 |
|---|---|
| 小説(地の文) | 0〜2個 |
| ブログ記事 | 1〜3個 |
| ビジネス文書 | 2〜4個 |
| 論文 | 3〜5個 |
小説ほど少なく、論文ほど多い。文章の「カタさ」に比例すると覚えておくと便利です。
まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 接続詞を使いすぎる原因 | 話し言葉の癖、論理の不安、執筆中の死角 |
| 削りやすい接続詞 | 順接(だから)、並列・添加(そして、また) |
| 残すべき接続詞 | 転換(ところで)、例示(たとえば) |
| 基本ルール | 削って意味が通るなら削る。同じ語の連続は禁止 |
| 推敲フロー | Ctrl+F → マーキング → 音読 → 削除 or 言い換え |
| 削りすぎ注意 | 逆接の標識は残す。ゼロにする必要はない |
| 言い換えの注意 | 類語に変えるだけでなく「そもそも不要か」を先に考える |
接続詞は文章の「糊」のようなものです。糊がなければ紙は貼り合わせられませんが、糊だらけの紙面は読めたものではありません。必要最小限の糊でピタッと貼る——それが垢抜けた文章のコツです。
推敲で迷ったら、この記事のBefore/Afterを見返してみてください。「あ、これ自分もやってた」と思う例がきっとあるはずです。
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