額賀澪『1冊目に読みたい小説の書き方の教科書』紹介|書くプロと教えるプロの両方を持つ人の入門書
「小説の書き方を勉強したいけど、本がありすぎてどれから読めばいいかわからない」——この悩み、創作者なら一度は通る道ではないでしょうか。
2026年3月16日に、その悩みに対する一つの回答が出版されます。額賀澪さんの 『1冊目に読みたい小説の書き方の教科書』 (日本ビジネスプレス/ワニブックス、税込1,760円)です。
タイトルに「1冊目」とある通り、これは「何から始めればいいかわからない人」のための本だと感じます。なぜこの本が注目に値するのか、構成と著者の背景から整理していきましょう。

1冊目に読みたい小説の書き方の教科書
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著者・額賀澪とは何者か
額賀澪(ぬかが・みお)さんは、1990年茨城県行方市生まれの小説家です。日本大学芸術学部文芸学科を卒業後、2015年に 第22回松本清張賞(『屋上のウインドノーツ』)と第16回小学館文庫小説賞(『ヒトリコ』)をダブル受賞 してデビューしました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| デビュー | 2015年(第22回松本清張賞+第16回小学館文庫小説賞) |
| 代表作 | 『ヒトリコ』『タスキメシ』『転職の魔王様』 |
| 教育活動 | 大正大学客員准教授、日大芸術学部非常勤講師 |
| オンライン講座 | 「拝啓、小説を書いてみませんか」(シンクロナス) |
| 講座実績 | 受講生から松本清張賞受賞者(波木銅氏『凍る草原に鐘は鳴る』)を輩出 |
注目すべきは、 「書くプロ」と「教えるプロ」の両方 を兼ね備えている点でしょう。
小説の書き方を教える本は多いですが、著者が現役の商業作家であるケースは意外と少ないものです。さらに、大学で講義を担当し、自らの講座から文学賞受賞者まで出ているとなると、「教える力」も実証済みといえます。
本書の元になっているのは、オンライン講座「拝啓、小説を書いてみませんか」で4年近く続いている実践的な創作授業です。つまり、理論だけでなく受講生からのフィードバックを踏まえて磨かれた内容が書籍化されたということになります。
代表作の幅広さにも注目してみてください。青春小説『ヒトリコ』、スポーツ小説『タスキメシ』、お仕事小説『転職の魔王様』——ジャンルを横断して書ける作家が「小説の書き方」を教えるということは、特定ジャンルに偏らない普遍的な技術を言語化できるということでしょう。なお『転職の魔王様』は2023年にKBS京都テレビでドラマ化され、成田凌さん主演で商業的にも成功しています。
また、輩出した松本清張賞受賞者の波木銅氏は、『凍る草原に鐘は鳴る』で第30回松本清張賞を受賞しています。「小説の書き方を教える講座から、実際に文学賞を取る人が出た」——これ以上の実績の証明はないのではないでしょうか。
全7パートの構成——描写→構成→テクニックの三段階
本書は第1章から第6章+実践編で構成されています。以下はその概要です。
| 章 | テーマ | 扱う内容 |
|---|---|---|
| 第1章 | 小説というメディアの特徴 | 他メディアとの違い、小説の得意・不得意 |
| 第2章 | 文章力の基本 | 描写の書き方、シーンの構成 |
| 第3章 | 情報処理 | 情景を浮かべやすい文章の書き方 |
| 第4章 | プロットの作り方 | 登場人物・構成・展開の設計 |
| 第5章 | テクニック | 人称と視点、エピソード化の技法 |
| 第6章 | ワンランク上へ | 改稿・推敲・新人賞への応募 |
| 実践編 | 課題 | 書いて身につける練習問題 |
この構成で感じるのは、 「文章→構成→テクニック」という順番が非常に丁寧 だということです。
多くの創作入門書は、いきなり「プロットの作り方」や「三幕構成」から始めます。しかし本書は、第2章・第3章で 描写とシーン という小説の基礎単位をまず固めてから、第4章でプロットに入る構成を取っています。
これは正しい順番だと感じます。家を建てるときに、間取り(プロット)より先にレンガの積み方(描写)を学ぶのは当然でしょう。描写が書けなければ、どんなプロットを組んでもシーンとして立ち上がらないからです。
第5章の「人称と視点」も見逃せないポイントです。なろう系では一人称が主流ですが、三人称に切り替えた途端に「何を書けばいいかわからなくなった」という声をよく聞きます。人称の選択はストーリーの伝え方そのものを左右するので、基礎の段階で体系的に学べるのはありがたいですね。
第6章の「新人賞への応募」にまでカバー範囲が広がっているのも特徴的です。書き方だけでなく、書いた後の出口戦略まで含めた設計は、一次選考を突破するための投稿テクニックを考えている方にとって実用的な構成だと思います。
この本が刺さりそうな人、刺さらなそうな人
すべての創作本がすべての人に合うわけではありません。本書の想定読者を整理してみましょう。
ちなみに、創作入門書の選び方に迷った経験を思い出します。私も「どの本から読めばいいかわからない」と恐る恐る書店を彷徨いた某日、『ミステリと言えば古畏堂——」的な気分で発作的に「プロット特化型」の本を最初に手に取り、描写力が身につかないまま何万字も書いた経験があります。基礎から学ぶことの大切さは、失敗して初めてわかるものですね。
刺さりそうな人
• 小説を書きたいが、何から始めればいいかわからない方
• 書き始めたものの途中で手が止まってしまう方
• 一次選考を突破するための投稿テクニックに取り組む前の基礎固めをしたい方
• なろう投稿の前に「小説の文法」を体系的に学びたい方
刺さらなそうな人
• すでに長編を複数本完結させている中級者以上の方
• Web小説に特化したテクニック(ランキング対策など)を求めている方
• キャラクター設計やプロット構成「だけ」を深掘りしたい方
タイトルに「教科書」とある通り、本書はあくまで基礎を固める位置づけです。すでに連載経験があって「プロットの精度を上げたい」「感情曲線を意識した構成を学びたい」という方には、より専門的な書籍のほうが合うかもしれません。感情曲線6パターンと物語の類型12パターンなども参考にしてみてください。
小説の書き方本おすすめ厳選10冊|目的別に選ぶ2026年版ブックガイドで紹介した本と比較すると、本書は 最も手前の段階 をカバーする一冊です。「Save the Catの法則」や「キャラクター小説の作り方」を読む前に、まず「描写とは何か」「シーンとは何か」を理解するための本、という位置づけになるでしょう。
気になるポイント——「実践編」の存在
個人的に注目しているのは、巻末の 実践編 です。
「文章は実際に書いてみることでしか上達しません」と紹介されているこのパートには創作課題が用意されているとのことです。書き方の本を読んで「なるほど」と思っても、実際に手を動かさないと身につかないのは創作の宿命ですから、課題付きの構成はありがたいですね。
推敲のコツ|第一稿を劇的に良くする方法で書きましたが、「書く→見直す→書き直す」のサイクルを回すことが上達の王道です。課題があることで、そのサイクルを回す練習ができるのは実践的な設計だと思います。
また、著者のオンライン講座「拝啓、小説を書いてみませんか」では、実際に受講生の課題作品に対する講評も行われています。書籍で基礎を学んだ後、さらに深めたい方は講座も選択肢になりますね。
ちなみに、このブログでも創作の基礎トピックは折に触れて扱っています。世界観設定で最初にやるべき3つのことや起承転結は時代遅れか?構成論の最前線など、本書の内容と併読すると理解が深まるテーマも多いはずです。
書籍情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 書名 | 『1冊目に読みたい小説の書き方の教科書』 |
| 著者 | 額賀澪 |
| 発行 | 日本ビジネスプレス |
| 発売 | ワニブックス |
| 発売日 | 2026年3月16日 |
| 価格 | 1,760円(税込) |
| ページ数 | 248ページ |
| ISBN | 978-4-8470-7636-7 |
まとめ——「最初の1冊」を選ぶ基準
小説の書き方本を選ぶとき、つい「テクニックが多く載っている本」を手に取りたくなります。しかし、基礎を飛ばしてテクニックだけ詰め込むと、応用が効かなくなりがちです。
私も過去に書き方本を何冊も買いましたが、最初に手に取った本が「プロット特化型」だったために、肝心の描写力が身につかないまま何万字も書いてしまった経験があります。あのとき本書のような「基礎を正しい順番で」教えてくれる本があれば、遠回りしなかったのにと感じます。
本書の強みは 三つ だと考えています。
1. 描写→構成→テクニックという 正しい順番 で体系化されていること
2. 著者が現役作家かつ教育者として 実績で裏付けされている こと
3. 実践編の課題で 手を動かす仕組み が用意されていること
「何から始めればいいかわからない」と立ち止まっている方にとって、文字通り 1冊目 の候補になる本ではないかと感じます。
どうですか、書ける気がしてきましたか?
良い教科書は「書きたい気持ち」に火をつけてくれるものです。エタらない秘訣|連載を完結させる5つの工夫も合わせて読めば、「書き始める力」と「書き切る力」の両方が手に入るはずです。
もし悩むことがあったら、このブログに戻ってきてください。同じように初心者だった私が、基礎から応用まで気づいたことを書き綴っています。
さあ、今日も物語を書きましょう。あなたの傑作を待っています。






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