《映画感想》Hello World 面白さ解説
こんにちは。
杞優橙佳です。
創作者の目線で書く、映画の面白さ解説です。
この記事は創作者様の参考になるはずです。
ぜひ読んでみてくださいね。
「お前は今日から三か月後、一行瑠璃と恋人同士になる」
https://hello-world-movie.com/
京都に暮らす内気な男子高校生・直実(北村匠海)の前に、10年後の未来から来た自分を名乗る青年・ナオミ(松坂桃李)が突然現れる。
ナオミによれば、同級生の瑠璃(浜辺美波)は直実と結ばれるが、その後事故によって命を落としてしまうと言う。
「頼む、力を貸してくれ。」彼女を救う為、大人になった自分自身を「先生」と呼ぶ、奇妙なバディが誕生する。
しかしその中で直実は、瑠璃に迫る運命、ナオミの真の目的、そしてこの現実世界に隠された大いなる秘密を知ることになる。
世界がひっくり返る、新機軸のハイスピードSF青春ラブストーリー。
以下感想。
Hello World見てきました。
とてつもなく心を動かされた名作でした。
今日はHello Worldの面白さ解説として、表現、キャラクター、展開の3つの視点から面白さポイントを解説します。
ネタバレもあると思いますので、
ぜひ見た後に振り返りとして見てみてください。
表現の面白さ
まず前提として、私はこの作品が一般的なデジタルアニメーション映画ではなく、3Dアニメーション映画であることを知らずに鑑賞しました。
そのためゲームのキャラクターみたいにぬるぬる動くキャラクターを見て、綺麗だけどアニメーションとしては整いすぎて好きじゃないな、パースが狂ったりする表現も含めての面白さがアニメ映画の売りなのにと考えていました。
しかしHello Worldの舞台が、仮想空間にコピーされた現実世界のメモリだという設定が明かされて腑に落ちました。
実際にVR空間に人間をコピーしようと思ったら、Vtuberのような3Dアニメーションになるでしょう。だから本作のキャラクターは3Dアニメーションでないといけなかったんですね。
パースが狂うというのは一人称の目線でしか起こりえません。現実世界でパースが狂っていたらそれ他人の目線から見た時どうなってるの?となりますから。
仮想空間と、それを表現するための3Dアニメーション。アイデアと手法のマッチングが完璧にハマっていて、大変美しいと感じました。
キャラクターの面白さ
この作品は3人のキャラクターの物語です。
男子高校生・直実
10年後の未来から来た自分を名乗る青年・ナオミ
同級生の瑠璃
の3人です。
Hello Worldがすごいのは、
わずか98分という上映時間の中で
3人の物語を完璧に完結させたところです。
例えば直実。
直実は彼女がほしい普通の高校生で、最初瑠璃のことを何とも思っていなかったが、ナオミの協力もあって瑠璃と付き合うことになり、世界を変える神の手(グッドデザイン)という力を得て、瑠璃のために世界と戦うことを選び、新しい世界で生きる権利を勝ち取ります。
面白いのは、10年後の自分であるナオミの言うとおりにすれば願いは成就するという「道」が示されているのに、その道が犠牲を払うものであることに納得できず、神の手を使ってその「道」に抗い、その上で瑠璃への想いを成就させる点です。
展開を予想させておいて、違う道筋から望むものにアクセスし達成するのは、面白さの基本ですよね。
直美は物語を通して2つの変化が芽生えました。
「敷かれたレールを歩く人生から、
自分で歩む人生へ変える」
「瑠璃を近寄りがたい人から
大事な人へ変える」
それがとても良くわかる映画でした。
直実目線で見ると、
王道のボーイミーツガール作品でした。
ナオミ
ナオミは直美を助ける素振りをしながら、自分の願望を叶えることしか考えていないキャラクターでした。
というのも花火大会の事故により、彼の時間軸の瑠璃が脳死状態となり意識が戻らなくなっていたからです。
ナオミは瑠璃を取り戻すために自分の体を機械とつなぎ、下半身不随になりながらも瑠璃のために仮想空間へのダイブに試行し続けます。
その努力がようやく報われ、仮想空間に入ることができたのが、この映画の物語でした。
しかしナオミは現実世界の瑠璃を蘇らせるためなら、過去の自分などどうなってもいいと考え、結果瑠璃に拒絶されてしまいます。
瑠璃のために献身し続けてきた彼が、
瑠璃から拒絶される……
その想像を絶する絶望を描いたあとで、
この映画は瑠璃にナオミを赦させます。
そしてナオミは、これまでどうなってもいいと考えてきた過去の自分のために、命を使います。
「そうさ、信じれば何でもできる」
私はこの映画を見る時、冒頭からずっとこの物語の面白さはなんだろうとロジカルに考え続けて、自分の心に浮かぶ感情を言葉で説明し続けてきました。
しかし上記のセリフが流れたあと、私の脳はフリーズしました。心が動きすぎて何も考えられなくなったのはこれがはじめての経験です。
ナオミの物語として最高に美しい終わり方だったと感じます。
瑠璃
瑠璃と直美の出会いは最悪でした。
バスの中で本を拾おうとした直美の頭が瑠璃のお尻にあたり、瑠璃は直美の頬をはたきます。
そこから図書委員の仕事や古本市の運営などを通して、徐々に直美との距離が縮まり、恋人同士になり、ナオミの計画によって直美と離れ離れにされるも、ナオミを拒否して直美を選び、再会します。
直美の恋人である瑠璃の物語はこれで完成されており、瑠璃の中で直美が大事な人になっていく過程がとても初々しく、恋をする彼女がとても可愛らしかったです。
しかしこの物語の素敵なところは、直美の恋人の瑠璃だけでなく、ナオミの恋人であるルリの物語も完成させて終わってくれるところです。
だから僕は物語のエンディングソングを聞いている間、言いようのない気持ちを感じました。心が動かされてつらい、離れたくない、そんな気持ちを久しぶりに感じました。
35歳でも心って動くんですね。
展開の面白さ
現実世界からダイブする仮想現実……を意識させておいて、実はその現実世界も仮想現実のひとつでしたという展開が予想外で面白く、じゃあ現実世界はどこにあるんだ?という底しれぬ世界の広がりを感じました。
今の世の中、無限にあるマルチバースのうちの一つの世界で起きた出来事という設定はスケールを広げる強力な舞台装置なのかもしれません。
その上で、直美の世界、ナオミの世界を股にかけて成長した瑠璃がルリの世界でナオミを待っていたという展開が、最高にエモーショナルだと感じました。
とはいえ初っ端に見た時は、最後の2秒は完全なる蛇足だろうと感じたわけですが。
あとあと考えるとナオミの世界のルリの物語を完成させるために、あの展開は必要だったことがわかります。
Hello Worldは登場するキャラクターが皆おさまるところにおさまっている作品です。
最高に美しく、心震える物語でした。
素晴らしい作品をありがとうございました。
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