《小説感想》弱キャラ友崎くん 令和のスピード感と前向きになれる展開が魅力

2020年9月21日

あらすじ

人生はクソゲー。このありふれたフレーズは、残念ながら真実だ。

だって、人生には美しくシンプルなルールがない。あるのは理不尽と不平等だけ。自由度が高いなんてのは強者の言い分で、弱者には圧倒的に不利な仕様でしかない。

だから、クソゲー。
あまたのゲームに触れ、それらを極めてきた日本屈指のゲーマーである俺が言うんだから間違いない。

――だけどそいつは、俺と同じくらいゲームを極めてなお、「人生は神ゲー」と言いきった。

生まれついての強キャラ、学園のパーフェクトヒロインこと日南葵。
しかも、「この人生(ゲーム)のルールを教えてあげる」だって? 

……普通は、そんなの信じない。
だけど日南葵は、普通なんて枠にはまったく嵌まらないやつだったんだ! 

第10回小学館ライトノベル大賞優秀賞受賞作。弱キャラが挑む人生攻略論ただし美少女指南つき!

物語の面白さ(印象に残った変化)

 「人生には生まれつきキャラ差があり、それは覆せないという思い込み」をもっていた友崎文也が、日南葵の説得で思い込みを捨てたシーンが印象に残りました。友崎文也には確かな考えがあって、それを変化させるためには、友崎の認める人間に、友崎の大好きなアタファミを尊重しながら言葉を紡ぐ必要がありました。日南葵のアタファミに対する真剣さと、「人生は『アタファミ』と同じくらい神ゲー」という誠意ある言葉があったからこそ、友崎は前に進めました。

 そこからは前向きなチャレンジが始まります。失敗しながらも、経験値を積んでいき、時にボスキャラと対峙しながらもその場を乗り切っていく姿……努力するやつをバカにするなと叫んだシーンは鳥肌が立ちました。実際に努力している姿を見ているからこそ、余計に熱くなりました。クラスの中で殆ど喋らなかった主人公が、陽キャ軍団の前で啖呵を切れるまでに成長したのは、友崎くんチャレンジの成果でしょう。

設定の面白さ(印象に残った設定)

 あらゆる展開に根拠のある作品と感じました。

 友崎が努力できることも、ゲームで一位を取り続けるための努力を続けられるという下地があったので、現実で努力を続けられることに説得力があります。

 日南と合流してからは、より具体的に学校で戦うための戦略が明示されました。

 中目標と小目標を掲げる日南は、読者と友崎に進むべきを明確に指し示してくれます。表情、体格、姿勢を鍛えることで見た目は改善できる、人生は勝ったときではなく負けた時に経験値が入るといったヒントは具体的なタスクを示し、進むモチベーションを後押ししてくれます。

 そして恐るべき学校の「空気の正体」(何を正義とするかを漠然と共有する)についても、この作品は明言します。この圧倒的な力「空気」を操れるのが、最強キャラクターであり努力家のヒロイン日南です。

 そういう意味では、強キャラに努力の裏打ちがされているのが特徴と感じました。単なる俺TUEEE物語ではないのですね。

展開の面白さ(印象に残った展開)

 開始60ページで友崎自身の抱えていた問題(人生には生まれつきキャラ差があり、それは覆せないという思い込み)がぶち壊され、物語が前向きに進んでいくスピード感が印象に残りました。

 起承転結の「承」で盛り上がりの最高潮をもってくる作品を先日読みました。

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 ですが友崎くんはさらに早い。2021年1月からアニメ化が予定されているようですが、アニメでしたら1話目で友崎自身の抱えていた問題は解決されるでしょう。2016年5月に発売された作品ですが、スピード感は令和のスピード感にあってると思います。2016年当時では受け入れられなかったスピード感に、やっと時代が追いついてきたというところでしょう。

言葉選びの面白さ(印象に残った言葉)

「『人生』は、戦闘に勝ったときじゃなくてね、負けたときにこそ、経験値が入るのよ」

「『でも』って言葉はね、逃げる言い訳のために使うべき言葉じゃなくて、妥協している状況をより良い方向へと修正するために使うべき言葉なのよ。」

 前向きさを生み出してくれる、日南の言葉が好きですね。

読後の感覚

 作中に出てくる課題を実践して自分を変えていく『友崎くんチャレンジ』を100日以上続けている猛者がいるそうです。この本で示される課題は具体的で、ついやってみたくなる魅力があります。この本を読むことで前向きな人が増えていくなら、それは素晴らしいことだと感じます。著者の屋久ユウキさんのTwitterも最高に面白いです。この作品はとてもいい。今後も応援します。